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土木から農業に転身した男「自然農法の先進地」で未来を思う

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.03.14 11:00 最終更新日:2019.03.14 11:00

土木から農業に転身した男「自然農法の先進地」で未来を思う

 

 名刺交換をして開口一番、「名刺をご覧になった方からはスギモトさんと呼ばれ、電話でスギキですと名乗ると、その後はたいていスズキさんと呼ばれます」と話す、杉木賢一郎さん(44)。

 

 調べると、同姓は全国で約3300人ほどだ。杉木さんは、早稲田大学理工学部土木工学科を卒業後、大手建設会社に入社。いまは、宮崎県綾町で小麦や大豆、野菜などを栽培している。転身の背景には、何があったのか。

 

 

「学生時代から環境問題に興味があったのと、海洋土木に関わりたかったので、卒業後は、その方面に強いゼネコンに入りました。しかし、仕事が環境破壊と無縁ではないことがわかるようになって、4年で辞めました。

 

 環境に配慮した仕事がしたいと思い、その前に営業力を身につけたくて外資系の保険会社に転じました。

 

 30歳のときに、添加物ゼロの、ドイツ製のスポーツ用マッサージオイルと出会った。輸入元の会社の社長にお願いして、子会社の社長に。その後独立して、そのオイルの代理店を始めました。代理店は、いまも続けています」

 

 40歳になったら、農業を始めるつもりだった。40歳から、2年ほど勉強した。無農薬で作付けするときは、まわりの農家の理解がないと、虫が集まったりするのでトラブルになりやすいと、何度も聞かされた。

 

 先輩農家から、自然農法に取り組む農家が多いと教えてもらったのが、宮崎県綾町。「直感的にここだ」と。それが転機となった。

 

 綾町は、自然生態系農業で町おこしに成功したことで知られ、2012年には町全域が、ユネスコエコパークに登録された。

 

「綾町には、自然農法を教えてくれる人がたくさんいた。41歳のときから、月に1、2回通って学びながら、小さな畑を借りて実験もしていました。いずれ住むつもりでしたし。

 

 まわりの方たちに、ここで自然農法をやりたいと話していたこともよかった。たまたま別件で宮崎に行ったとき、綾町でお世話になっていた方から電話があり、いい物件が出たから見に来たほうがいいと言われて行ってみました。

 

 5400平方メートルの畑で、ご主人が亡くなられ、家つきで買ってくれる人を探していたのです。作業場もあり、トラクターなども全部そのまま譲りますとのこと。行けばすぐに農業が始められる、初心者のためのスターターキットみたいな物件。

 

 その場で買うことを決めました。不動産屋さんがネットに公開する前日だったそうです。運命的なものを感じました」

 

 農業を始めようと思ったきっかけは、オイルの仕事をしていたときに環境問題の話を聞いたり、調べたりしていたら、「食」に対する興味が湧いたからだ。

 

 現在多く使われる農薬は、水質や土壌に悪影響を与えることもあると指摘されている。

 

「たとえば米国産小麦は、栽培時に農薬を撒き、船で輸出する際にも虫がわかないように、農薬を使う。

 

 僕の農業の師匠は、古代小麦の品種を無農薬で栽培していますが、これでパンを作ると、小麦アレルギーやグルテン過敏症といわれる人でも、食べられる人が多く見受けられます。

 

 また、パンを作るときに膨らみやすいように、グルテンの含有量を増やす品種改良もおこなわれてきた。小麦は何千年も前から栽培されて食べられてきたものです。ここ数年で悪者扱いされるのには、理由があるわけです」

 

 42歳で始めた農業。現在は3面の畑を持ち、総面積は1万3000平方メートル。おもに大豆と小麦を栽培しているが、2019年からは米も栽培する。

 

「コンセプトは、なるべく不自然を自然に近づけて、未来の子供たちに少しでもきれいな地球、日本を残したいということ。

 

 3年間は赤字覚悟ですので、4年めから黒字にするために、2019年やることが大きな意味を持つ。黒字にしなければ、未来の子供常にトップを目指してきた男「人生の転機」を陶芸で知るたちのために、夢を持って無農薬農家になろうという人がいなくなる」

 

 ところで杉木さんは、農園でワンダフルという名の、1歳になる狼犬を飼っている。ワンダフルは、狼の血が8割に犬の血が2割。糞を畑のまわりに撒いただけで、2017年は猪に全滅させられたサツマイモが、2018年はすべて収穫できたそうだ。

 

 自然の力を借りて、夢に向かう。

 

(週刊FLASH 2019年3月19日号)

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