少子高齢化や核家族化が進む現代では、遺産をめぐる争いの数は確実に増えている。なかには、亡くなる直前に婚姻関係を結んだことで、遺産争族が複雑化するケースも。一般家庭の事例を例に、相続問題について学ぶ。
冒頭の図のケースについて、男性と女性は、それぞれバツイチで子供がいる。2人は10年ほど事実婚の関係で、男性が病気で亡くなる数日前に入籍した。その後、男性の子供たちが、婚姻の無効を訴えた。
【関連記事:会ったことない遠縁との争族防ぐ改正相続法早わかり】
本人たちにとっては、最後に望みをかなえただけなのに、悲しい「争族」になってしまった事例だ。
「お2人は、いちど離婚をした同士のカップルで、入籍しようと何年も前から話していたそうです。でも、子供の気持ちを気遣い、籍を入れずにきた。男性が亡くなる数日前に入籍し、たった数日だけど、結婚できて幸せだったと話していたそうです。
でも、男性の娘さんたちからすると、まったく寝耳に水な話で、そんな話はおかしい、と。『薬などの副作用で意識が朦朧としていたんじゃないか』『女性が強引に誘導したんじゃないか』と疑っています。
資産があったことに加え、大好きなお父さんが取られてしまったという、感情的な恨みもあるのでしょう」(相続問題に詳しい木野綾子弁護士、以下同)
死の直前に、世話になった人や愛する人に何かを遺したいと思うのは、故人の最後の意思である。だが、こういった争族事例は多いのだという。
「病気や治療のために、意識がはっきりしていなかったと主張され、相続で争うことは多い。認知症が増えている昨今では、本人は判断できなかったはずだと、主張する場合もあります。
そうならないためにも、元気なうちに家族に遺言を残し、意思を伝えておくことが重要だと思います。最近は、子供がいないご夫婦も増えています。兄弟相続は、遺言でなんとでもできます。
自分が亡くなったあとで、親族が相続で揉めないように、自分の財産を整理し、把握しておくことが大切です」
死人に口なし、となる前の、生前対策が肝要だ。
(週刊FLASH 2019年2月26日号)