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吉田戦車、自撮り棒で愛猫とツーショット狙うも、猫に動かれる
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.04.03 11:00 最終更新日:2019.04.03 11:00
衝動買いというわけではない。自撮り棒の必要性は感じていた。
それは、観光用に、というようなことではなく、「横になっていてネコが腹に乗ってきた時にあると、ツーショットが撮れるな」という理由である。手を伸ばした自分撮りでは、私とネコがうまく収まるようには撮れないのだった。
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とはいえ、ネットで買ったり、家電量販店に見に行ったりするほどの緊急性はまったくなく、保留にしておいたのだ。
出会いは意外な場所だった。なじみのスーパーでゴボウやヨーグルトを買うために、レジに並んでいた。土日はまとめ買いの客が多く、前にいる2人とも、カゴに山盛りの商品を入れている。
ヒマなのでレジ横の「電池などコーナー」を見ていたら、そこにぶら下がっていたのである。オレンジ色の、日本語がどこにも書いていない細長い箱が。
「MONOPOD」と大きくロゴがあり、つまりカメラ用の「一脚」ということだが、パッケージ写真の外国人女性2人が使用している姿はまさに自撮り棒。手にとって英語の説明をなんとか読む。「写真もビデオも、どこでも自分自身を!」などと書いてある。
1分ほど考えて、カゴに入れた。うしろに並んでいる客から「あ、買った……」「このおやじ、自撮り棒買った」という心の声が聞こえた気がした。税込み810円。
箱の中には日本語はおろか、英語や中国語などの取説すら入っていなかった。どういうところから買い付けたのだ、いつも行くスーパーよ。
長さは携帯時30センチ、最大に伸ばして110センチ。Bluetoothの撮影リモコンは付属しておらず、カメラやスマホのセルフタイマーを使うタイプ。この値段だもんな。
なるほど、ここにこうスマホをはさむのか、と、しばらくいじっているうちに構造は理解した。散らかりまくりの娘の机まわりなど撮ってみる。そこそこおもしろい。
「なんだそれは!」と、妻がやってきたので、いっしょに自撮りをしてみたりして、外国人観光客気分を味わう。
自室に寝転がって、いわば自分をエサにしていると、さっそくオスネコのほうが寄ってきて、腹によじ登った。重い。よし釣れた、と、自撮り棒にスマホを装着しはじめたら、ネコ、腹から降りる。こら動くな。
自撮り棒の持ち手のストラップに反応している。ぶらぶらゆれるストラップを、何か遊んでくれるものと思い、腹の上に落ちつこうとしない。
そういうわけで、初回のネコとのツーショット自撮りは、微妙な数枚が撮れたのみだった。まあいい。本来の用途、人間の観光記念写真にも使えそうだし、悪い買いものではなかった。
画像を頼りにネット検索したら「ノーブランド品、372円」とある。ノーブランド、そして半額以下か……、とも思ったが、なじみのリアルスーパーに儲けてもらうことも、地域社会で暮らしていく上での、買いものの、ひとつの形だろう。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」 にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。近刊に本連載の単行本『ごめん買っちゃった』(光文社)。そして、『出かけ親 1』(小学館)が3月29日発売!
(週刊FLASH 2019年4月9日号)