いま、空前の「ジャパニーズ・ウイスキー」ブームが到来している。2009年に「角ハイボール」が流行したのをきっかけに、2014〜2015年は、NHKの朝の連ドラ『マッサン』が後押し。そして、作り手のこだわりが詰まった小規模のメーカーも続々誕生している。
埼玉県秩父市の酒造メーカー「ベンチャーウイスキー」が生み出したウイスキーブランド「イチローズ・モルト」は、本場英国の専門誌主催の「ワールド・ウイスキー・アワード」において、立て続けに賞を獲得している。
2017年は「シングルカスク シングルモルト部門」、2018年は「ブレンデッドウイスキー リミテッドリリース部門」と連続して最高賞を受賞。名実ともに、世界のクラフト蒸溜所のトップとなった。
そこで本誌は、一般公開をしていない秩父蒸溜所をの舞台裏を覗かせてもらった。同社のエントランスには、ウイスキー造りの心臓である蒸溜器(ポットスチル)が飾られている。
案内してくれたのはブランドアンバサダーの吉川由美さん。元帝国ホテルのバーテンダーで、自身も無類のウイスキー党だ。スコットランドの蒸溜所でも経験を積んだ。
「近くに第2蒸溜所も建設中で、生産量も5倍になります。入手しづらいとのお叱りも受けてきましたが、飲みたい人がちゃんと飲めるようになるはずです」
製麦済みの麦芽は粉砕後、湯を加えて糖化槽に投入。かき混ぜて濾過し、採取された麦汁は次に発酵槽を経て、蒸留器へ。同社には、スコットランド・フォーサイス社製の最小規格のポットスチルが2基稼働している(冒頭の画像)。
全国ではさらに、上の図のようなクラフト蒸溜所が稼働中。それぞれ日本酒、焼酎、地ビールで定評のある蔵元だ。「それぞれが切磋琢磨し、持ち味を発揮できたら」と、吉川さんもこの混戦状況を歓迎していた。
取材&文・鈴木隆祐
(週刊FLASH 2019年3月19日号)