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飛び降り自殺から生還した女性が生み出した「人生相談の方程式」

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.04.21 16:00 最終更新日:2019.04.21 16:00

飛び降り自殺から生還した女性が生み出した「人生相談の方程式」

 

「2万1321人」
 この数字を見て、あなたは何を思い浮かべるだろうか。正解は、「2017年の自殺者数」だ。計算上は1日あたり58人ほどが自殺している。

 

 彼ら、彼女たちが自殺するのをどうすれば止められたか。どうすれば別の逃げ道を作ることができたか。この仮の話について、ある女性はこう考える。

 

 

 誰かとつながりを持てたら、最後の一線を踏み越えなくて済んだ。他の人に心情を打ち明け心を開けたら、「明日、もう1日だけでも生きてみよう」と思えた。同じような生きづらさを抱えた「仲間」と出会うことができたら、「独りじゃない」と少し楽になれた、と。

 

 こう考えるのは、女性のかつての経験から来ている。
 親、兄弟、親友とのつながりを、自ら絶つ決断をしてしまった。自分の気持ちは「どうせ誰にも分からない」と殻の中に閉じこもってしまった。生きづらさを抱えた「仲間」の存在を忘れ、どんどん孤立してしまった……。

 

 そして、女性が出した結論は、マンション12階にあたる屋上から飛び降りることだった。この女性がモカさん(1986年3月生まれ、元男性)だ。

 

 モカさんは2016年から「お悩み相談」を続け、約600人の悩みと向き合ってきた。その実践の中で、モカさんなりに結論に至った「悩みの方程式」を紹介する。

 

 悩みの根源となる原因は大きく3段階あると考える。

 

 最も深刻で根本となる原因は「絶望」。生きる目的を失い、絶望的な状況に追い込まれると、自殺や生活崩壊につながる。対処法としては「希望」を与える。

 

 その一つ上、絶望よりは追い込まれておらず、希望はあるが、それが叶えられるか分からない段階の「不安」がある。自信がない人たちに多い。生きる上で苦しむことになり、悩みの原因として多数の人が抱える。この人たちには「勇気」を与える。

 

 絶望に追い込まれず不安もないが、最後の悩みとしては「迷い」がある。自信もあるし、希望も夢もある。ところが、どうやって自分のエネルギーを発揮したらいいのか分からない。こういう人たちには、「貢献」に目を向けさせる。自分がしたいことだけでなく、求められている需要の高いことも視野に入れなさい、と助言する。

 

「孤独」や「自信がない」という感情は、本人がそう見ているからだ。物理的に家族がいる、恋人がいるという条件の問題ではない。モカさんがマンションから飛び降りた時、モカさんは自分が孤独だと思っていた。家族もいたし、恋人もいたのにだ。

 

 自信を持っている、持っていないも、同じことと捉える。周りから見たら、とても自信がありそうな人でも、本人が「自信がない」と思ったら「ない」となる。その人の心の持ちようだからだ。

 

 悩み相談では、孤独や自信のなさを自分で認識し、打ち明けてくる人がいる。その一方で、本人がそれに気づいていない場合もかなりの割合である。モカさんは話を聴きながら、「あっ、この人孤独のパターンだ」「自信ないパターンだ」と気づく。

 

 具体的にその人が何につっかえているかは、相談中に本人が意識せずとも漏らす。繰り返し語る言葉がヒントになる。

 

「お父さんがこうしろと言った」
「お父さんには逆らえない」

 

「彼女が」「あの子が」「未来が」「将来が」「子どもが」「息子が」……という言葉だ。相談者は無意識に何度も同じ話をし、キーワードを出してくる。そこに何かしこりがあると見定め、掘り下げ、核心に触れていく。

 

 ポイントが見つかれば、最も深刻な悩みの原因「絶望」に「希望」を与えられる。相手の話を聴く。分かりやすいたとえ話をしながら導き、最後に具体的に助言する。この三つのアプローチで、相談者の悩みにきちんと向き合うことが肝心だ。

 

 未来に可能性はあるよ、前向きに生きていきましょうよ―─。「そんな薄っぺらいだけの言葉を、私たちは語らない」とモカさんは断言する。たとえば、世界の見方を教えることから入り、相手の人生に引きつける。

 

 以下、モカさんが相談者に語りかける言葉そのままに記す。

 

 あなたの人生、いまは真っ暗でしょ。でも、真っ暗だけが人生じゃない。
 この世界はどっかに光がある。
 じゃあ、君の光はどこだろう?
 父親の話や仕事の愚痴を聞いたけど、もしかしたら別の選択肢もあるんじゃないか。
 いまの仕事を辞める。
 生活保護になっても、作りたいものに熱中し創作していく。
 それが売れ、仕事になったり人の目についたりしたら、いいんじゃないのかな。
 これまで全く聞いたことない話、世間で一例もない話じゃないよね。
 こうして成功したらお父さん、お母さんがあなたのことを認めてくれるんじゃないの。
 いまは認めてくれなくても。そういう才能があったのだねと、みんなが後で認めてくる。
 だから、いまから嫌なことをやめて、好きなことをやろう。
 いま、私が言っているのは全く不可能な話でなく、少しは可能性あるでしょ。
 人生、前向きに生きた方がいいじゃん。
 日々、後ろ向きに生きることもできる。
 死ぬまで後ろ向きに生きることもできる。
 けど、前向きと後ろ向き、どっちが幸せだと思う?
 簡単だよね、答えは。
 前向きに生きた方がいいじゃん。
 数パーセントの確率でも、もしかしたらうまくいくかもしれないと前向きに生きている人生は、うまくいかなかったとしてもその時間は幸せだよ。
 最初の作品がダメだったら、2作目、3作目と次のプランに挑戦していけばいい。
 私に相談の電話をしてくれてもいいから。
 一緒にその夢、希望を叶えよう。

 

 モカさんの語りは、相談者に寄り添い、優しい。

 

 以上、モカ/高野真吾氏の新刊『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』(光文社新書)をもとに再構成しました。経営者・漫画家であり、元男性のトランスジェンダーでもある彼女が、自殺問題を「日本の戦争」と捉え、自殺願望者に寄り添う活動を始めた理由を明かします。

●『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』詳細はこちら

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