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糖質を摂取すると、人体にどのような変化が起きるのか?

ライフ・マネー 投稿日:2019.05.27 11:00FLASH編集部

糖質を摂取すると、人体にどのような変化が起きるのか?

 

「糖質」という言葉は以前はほとんど使われていなかった。英語にも「糖質」に当たる単語はない。しかし、京都の高雄病院理事長で、糖質制限の第一人者である江部康二先生が「糖質制限」を提唱してから、徐々に広がりを見せ、今では普通に使われる言葉となった。

 

 食品の糖質量の表示も、今では珍しくない。以前であればパッケージには「カロリーゼロ」や「低脂肪」の文字が並んでいたのに、今や「糖質オフ」や「低糖質」などの表示が多くなった。

 

 糖質とは、簡単に言えば、炭水化物から食物繊維を引いたものだと思えばよい。砂糖などの甘いものだけでなく、米や小麦などのでんぷんも糖質である。いわゆる主食やイモ類は糖質のかたまり塊である。

 

 

 糖質(炭水化物)は、タンパク質や脂質と並んで三大栄養素の一つであることは確かである。しかし、体への役割を考えると、どうであろうか? 

 

 人間や動物が食事をする理由は、体を構築し、生き延びるために必要な栄養素を取り入れるためだと考えられる。そうすると、果たして糖質は、そのような目的のために必要であろうか?

 

 実は糖質は、体を構築するものでもなければ、生き延びるために必須のものでもない。なぜなら、人間の体には、その他の栄養素を使って糖質を作り出すメカニズムがあるからである。

 

 だから、糖質は必須の栄養素ではない。しかし、タンパク質や脂質は必須の栄養素である。体のほとんどはタンパク質と脂質で構成されているのである。

 

 では、そのような「必須ではない」糖質を摂取すると、人体にはどのような変化が起きるのであろうか?

 

 一番は血糖値の上昇である。栄養素の中で、直接血糖になるのは糖質のみである。血糖値は糖質が分解されてブドウ糖になり、それが血液に流れている濃度を表している。そして、糖質を過剰に摂取すると、その分血糖値の上昇幅は大きくなる。

 

 すい臓が健康であれば、すい臓のβ細胞からインスリンというホルモンが出て、血糖値を下げてくれる。インスリンは唯一の血糖値降下ホルモンである。インスリンの作用で血中のブドウ糖は筋肉や脂肪細胞などに取り込まれ、エネルギーになるが、すぐに使わない場合は貯蓄型ブドウ糖であるグリコーゲンや中性脂肪に変換されてしまう。

 

 グリコーゲンは大量には溜めておけないので、ブドウ糖の多くは脂肪となってしまう。糖質過剰摂取を続けると、インスリンがたくさん分泌され、脂肪が増加し肥満になるのである。

 

 そのまま糖質過剰摂取を続けインスリンが効かなくなってくると、インスリン抵抗性という状態になってしまい、血糖値が十分に安全な範囲にまで低下しなくなる。

 

■高血糖の何が悪いのか?

 

 糖質過剰摂取で血糖値が上昇するのは確かである。しかし、高血糖になることは何が悪いのであろうか? 糖質過剰摂取では血糖値が急上昇し、その後、通常の値まで低下するが、そのような急上昇の山ができることを「グルコーススパイク(血糖値スパイク)」という。

 

 このグルコーススパイクが、酸化ストレスを増大させたり、炎症反応を増加させ、血管を傷つける。酸化ストレスは、体の中で発生する活性酸素という有害物質が、抗酸化物質などでうまく除去できる量を上回る場合に起きる。

 

 高血糖は、様々なメカニズムで酸化ストレスを増大させる。簡単に言えば、活性酸素の産生を増加させるのである。

 

 活性酸素はタンパク質、脂質、酵素などを変性させて、細胞や遺伝子、様々な臓器を傷害する。それが老化、炎症、発がん、動脈硬化などを招き、様々な病気を発症する。現在は糖質過剰の食事を頻回に摂っているので、1日に何度もこのグルコーススパイクが起きていることになる。

 

 また、メイラード反応として知られている、糖とタンパク質を一緒に加熱したときに認められる褐色に変化する反応がある。これが「糖化」反応である。糖は非常に反応性が高く、人間の体内でも糖は高濃度になるとタンパク質とくっついて、同じような糖化反応が起きている。

 

 そして、その反応の最終的な状態である、終末糖化産物(AGEs)というものができる。糖化したタンパク質や脂質は変性して、機能障害などの有害作用を引き起こすのである。さらに終末糖化産物(AGEs)も、酸化ストレスを増加させたり、炎症反応を起こす。炎症も活性酸素を増加させる。

 

 体のほとんど全ての細胞、組織、酵素などは、タンパク質(アミノ酸)と脂質でできている。つまり、体の中で糖化やAGEs化しないものはないと言ってもよい。だから高血糖はどのような機能障害をも引き起こす可能性を持っているのである。

 

 通常の糖質過剰の食事をしていると、高血糖になっても何も感じずにわからないが、糖質制限を始めた後で、たまに糖質を摂ったときに高血糖状態になると、ものすごく気分が悪くなったり頭痛がしたりする。脳に悪いことが起きているかのようである(いや、実際に起きている)。

 以上、清水泰行氏の新刊『「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因』(光文社新書)をもとに再構成しました。7000を超える論文を参照しつつ、裏付けのある形で、様々な疾患と糖質過剰摂取との関係を解説します。

 

●『「糖質過剰」症候群』詳細はこちら

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