「がん保険が売れているのは、『ガンの医療費は高い』と思い込んでいる人が多いからです。ところが、医療関係者の証言や保険会社のアンケート調査によると、通常は50万円程度の出費ですむことが多い。高齢者はガンに罹る確率が高いとはいえ、自己資金で対応するほうが合理的だと考えます」(後田氏)
がん保険といえば、「先進医療特約」だが、これはどうか?
「先進医療は『最先端の有効な医療』ではなく『エビデンスが不足している実験的な医療』です。小児ガンの放射線治療など、有効だと認められた治療は、すでに健保の対象になっています。したがって、先進医療特約目当ての保険加入は疑問です」(同前)
また、親が元気であればあるほど、死ぬまで保険料を払いつづける「終身払い」タイプの生命保険にも気をつけたほうがいいと、前出のA氏は注意を促す(★CHECK3)。
「年々平均寿命が延びており、親世代もまだまだ長生きする時代。長生きすればするほど損をするシステムです。90歳で親が亡くなるとき数千万円もらうため、延々保険料を支払う必要ってありますか?」
資産運用を目指す「変額」「外貨建て」などの保険も、親世代の退職金を狙って保険会社がすすめてくる商品だ。
「手数料やそのほかの諸費用が高いし、販売員の知見も不十分です。退職金が出るタイミングを見計らってセールスをかけられ、システムを理解しないまま契約している人が多いようですが、運用目的でも加入は厳禁です」(後田氏)
少なくとも、金利や為替リスクについて詳しい人間に向けられた商品なのは間違いない。その点、高齢の親に向いた商品なのかを確かめるこんな方法があるという。
「もし親が資産運用を謳うタイプの保険に入っていたら、その保険の内容を親が自分の言葉で説明することができるか、試してみてください。それさえできないならば、解約を考えるべきです」(A氏)
また、親が運転免許を返納していた場合、自動車保険の解約も忘れずにおこないたい。
保険のチェックがすんだら、不要な保険を解約しよう。
「その際、『あと○年で元が取れるから、それまでは続けたい』と親が言うかもしれません。損失を認めたくないのです。いちばんよくないのは、これまでその保険にいくら払ってきたかを計算することです。
そうではなくて、これからお金が増えるかどうかで、解約すべきか否かを決めるべきです。この先、何年も元本割れが続くような契約は解約するに限ります」(後田氏)
解約以外は「払済」という選択もある。保険料の払い込みをやめることで保障は縮小されるが、契約は継続するという手続きだ(できない保険もある)。現時点での解約返戻金(★CHECK5)額を確認し、どちらが得かを判断したい。
その際に気をつけたいのが、前述の外貨建て保険だ。
「解約する際の返戻率が低い商品が多く、円建て保険より、さらに慎重に返戻金をチェックしてください」(A氏)
親世代にとって保険のメリットがあるとすれば、せいぜい相続税対策ーーというのが後田氏の考えだ。死亡保険金は相続財産と見なされ、相続税の対象となるが、「500万円×法定相続人数」が非課税となる。
「ただし、銀行窓口などでは、相続財産の評価などしないまま、最大限の保険加入をすすめられることもあります。有識者にお金を払って相談するのが無難でしょう」(後田氏)
保険契約の解約や変更は、原則として契約者本人だけが請求できることになっている。親が認知症などで意思疎通が難しくなった場合、解約や変更をするハードルは高くなる。
「課税関連など、従前とは変わる項目を確認したうえで契約者を自分に変更する選択肢もあります」(後田氏)
いずれにせよ、親が元気なうちに、きちんと話し合いを進めたい。
次ページに、「親の保険」の見直し方についてまとめた。