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吉田戦車、久しぶりの「袋ラーメン」欲にアルミ鍋で激煮する

ライフ・マネー 投稿日:2019.10.23 11:00FLASH編集部

吉田戦車、久しぶりの「袋ラーメン」欲にアルミ鍋で激煮する

 

 袋麺、カップ麺共に、インスタントラーメンを一番食べていたのは、やっぱり20代の頃だ。

 

 健康を気づかい、年々消費量は減っているものの、今でもたまに無性に食べたくなり、5袋パックを買ったりしているわけだった。

 

 子供が小さい頃は、妻子とベビーシッターさんが家で昼食をとることが多く、昼間、台所を好きに使えないことが多かった。

 

 

 妻は「ラーメンでもうどんでも好きに煮て食えよ」と思っていただろうが、彼女はパンやピザなど食べて満腹なくせに、人のラーメンを横目で見て、

 

「一人だけおいしいもの食べて……」

 

 という表情を浮かべがちな人であり、おちついて食事を楽しめなかった。そこで、水道も換気扇もない6畳の自室に小型カセットコンロを導入し、煮ることにした。

 

 電気ポットは導入していたので、カップ麺は作れたが、袋ラーメンを煮たい気持ちが強かった。

 

 あの「炎が見たい……」という強い気持ち。赤ん坊はかわいいものの、相当ストレスがたまっていたんだなあ、と思う。

 

 鍋はどうしようとネットを徘徊し、見つけたのが、オオイ金属「片手鍋 アルミラーメン鍋17cm」だった。1000円ぐらい。

 

 買うしかないだろう。

 

 届いた鍋を手にとると、薄手でとても軽い。だが、チープなようでいて、作りに荒っぽさはなく、堅実な昔の工業製品に見えた。使い勝手もまったく問題なく、掃き出し窓を開けて蒸気を逃がしながら、楽しくラーメンを煮た。

 

 が、数回楽しんだあと、食べている最中いきなり入ってきた妻に、アダルト動画視聴中の現場でも目撃してしまったような顔をされ、「秘密の自室クッキング」はそれでおしまいになった。

 

 予想されていたことだが、換気、残り汁の廃棄、洗い物ができないことも継続の足かせとなった。商売柄原稿や書籍がたくさんあり、あまり湿気てほしくない部屋ではあるのだった。

 

 数年後の最近。子供は小学校に通いはじめ、妻と昼食時間がかち合うことはあるものの、台所を自由に使える時間は大幅に増えた。

 

 久しぶりに袋ラーメン欲が高まり、故郷に帰った時に、東京では買えない「マルちゃん」の「塩ラーメン、しょうゆ味ラーメン、みそ味ラーメン」を買ってきた。

 

 少年時代の定番袋ラーメンは「サッポロ一番」ではなくて、このシリーズだった。「塩」を手にとり、ステンレス5層片手鍋を出しながら、待てよ、と思った。

 

 この歴史あるパッケージのラーメンには、あのアルミのラーメン鍋が似合うのではないか? 押し入れから数年ぶりにひっぱり出されるラーメン鍋。

 

 マルちゃんの「正麺」じゃない昔のインスタントラーメンの香りが、おどろくほど似合う……気がする。

 

 部屋クッキング、おもしろかったなー。でも二度としないだろうなー。子供もずいぶんでかくなったなー、などと思いながら、鍋から直接食べた。

 

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。本連載の単行本『ごめん買っちゃった』(光文社)、『出かけ親 1』、最新刊『忍風! 肉とめし 3』(ともに小学館)が発売中!

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