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新商品のアイデアを思いつきたいなら「新奇事象」に注目すべし

ライフ・マネー 投稿日:2019.11.04 11:00FLASH編集部

新商品のアイデアを思いつきたいなら「新奇事象」に注目すべし

 

 商品・サービスに新しい切り口を見つけるために、秀でたアイデアを求めてフラリと「街ブラ(あてもなく街をブラブラと歩く)」する人たちが一定層います。広告代理店やデザインを生業としている人たちに多い印象があります。

 

 なぜ、街に出るのか? 街にどんなヒントが隠されているのか? そのような疑問を、街ブラする人に一度、聞いたことがあります。彼は言いました。

 

 

「アイデア出しに煮詰まって頭から何も出なくなると、気分を変えたい! リフレッシュしたい! って思うんですよ。でも本当は、視座を変えたいんですよね。円錐を真横から見るのではなく、真上から見るように、考え方を変えたい。だから街ブラして、いろんな風景を観察して、様々な気付きを得たいんです」

 

 街を「観察」してアイデアの気付きを得る。なるほど、と私は膝を打った記憶があります。仕事のためにそこまで努力できるのはすごいなぁ、と感じたことを覚えています。

 

 とはいえ、誰でも街ブラをすれば新たなインスピレーションを得られて、商品・サービスに新しい切り口を見つけて、秀でたアイデアや優れたクリエイティブを生み出せるわけではありません。95%ぐらいは「無理だ」と私は思います。残り5%は、私だって街ブラで優れたアウトプットを出せると信じたいだけです。

 

 街ブラが天才にしか効かないなら、商品・サービスの新しい切り口を見つけるためのアイデアが浮かばずに苦しんだとき、どうすれば良いのでしょうか。

 

 例えば、最近は「アイデアソン」と銘打って、外部の人たちにアイデア出しを依頼する事例も増えているようです。しかし、アイデアが必要なとき、そもそもアイデアをいきなり考えること自体が間違っていると突っ込むべきだと思います。

 

 アイデアが必要だからとアイデアを考えていれば、行き詰まるのは当然です。人間が潜在的に何を求めているか、何に満たされていないかを理解せず、いきなり問題を解決するアイデアを考案しているからです。問題だけを見て、人間を見ていないからアイデアが浮かばないのです。

 

 そこで、ちょっと変わった事象、これってこの人しかやっていないだろうなと思わせる事象にのみ焦点を絞って、人間を見に行くことをおすすめします。この人しかやっていないと思われる事象を「新奇事象」と言います。

 

 ちょっと変わっている消費行動や生活行動、マイブーム、こだわり、あるいは提供している企業の側からすると間違った使い方や想定していなかった使い方、使い方は普通だが目的が面白いもの……などの総称が「新奇事象」です。

 

 ちょっと変わったとはFunny(愉快)という意味ではなく、Unique(独自)という意味です。他の人たちとは違うという捉え方をすれば良いでしょう。

 

 新奇事象からアイデアが生まれた例は、いくらでもあります。

 

 オンロード用自転車を改造して山道を楽しんでいる若者の行動から、「マウンテンバイク」のアイデアが生まれて開発されました。

 

 工事現場などで使われるマスキングテープで写真のコラージュなどを楽しむ女性の行動から、「女性用雑貨としてのマスキングテープ」のアイデアが生まれて開発されました。

 

 缶ビールを冷凍庫に入れてキンキンに冷やして飲む(そしてよく失敗してカチンコチンにしてしまうか、破裂させてしまう)サラリーマンの行動から「氷点下で楽しむビール」のアイデアが生まれて開発されました。

 

「そんな自転車の乗り方は危ないよ!」
「マスキングテープはそんな風に使わないよ!」
「ビールの風味が損なわれちゃうよ!」

 

 ……と変化を無視した結果、市場が創造されてから慌てて参入する羽目になった企業は多いのではないでしょうか。

 

 世の中で既に顕在化している「既存の延長線」からいったん視線を逸らすだけで、思いもつかなかった新しいアイデアは生まれます。成熟した「だいたい良いんじゃないですか」市場では、新奇事象に着目することで、消費者が潜在的にどんなことを求めているかという「芽」を発見できるようになります。

 

 小人数しか行動していないなら、それをもとにしたアイデアなんてその人たちしか買わないんじゃないの、と思われるかもしれません。価値を感じるから行動に移るのであって、もしかしたらその価値が知られていないだけかもしれません。その新しい価値に基づくアイデアで、世間に受け入れられる可能性は大いにあります。

 

 

 以上、松本健太郎氏の近刊『なぜ「つい買ってしまう」のか?~「人を動かす隠れた心理」の見つけ方~』(光文社新書)をもとに再構成しました。天才でなくても、ヒットするためのアイデアは作れるのです。

 

●『なぜ「つい買ってしまう」のか?』詳細はこちら

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