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吉田戦車、職人さんにおやつを出して知った「甘さの適材適所」

ライフ・マネー 投稿日:2019.11.27 11:00FLASH編集部

吉田戦車、職人さんにおやつを出して知った「甘さの適材適所」

 塗装系のリフォームをすることになった。かなり高額な「買いもの」になるわけだが、それはおいといて、それに付随した臨時買いものをとりあげたい。まず、大幅に増えたのが「お菓子代」だ。職人さんたちに、おやつに食べてもらうためである。

 

 チョコ系、クッキー系、パイ系、いろいろ入ったアソート、一口羊羹、歌舞伎揚げ的なせんべい、アーモンドとチーズがのったせんべい……。目についた個別包装の菓子を買ってきて、妻がバスケットに詰め合わせた。

 

 

 だいたいよく食べてくれて、しかもゴミは持ち帰ってくれるのだが、やはり減りがいいものと悪いものはあるのだった。

 

 クッキー、ビスケットなどは、もそもそして口の中の水分を奪われる感じがあるのか、残りがち。パイやチョコは減っている。和菓子にしろ洋菓子にしろ、いろいろ入ったアソートは受けが悪い。「おばあちゃん菓子」の香りは、肉体労働の現場には不似合いなのかもしれない。

 

 飲みものは、お茶数種類の500ccペットボトルを出していたが、職人さんの会話を聞くともなく聞いていると、けっこう自販機に買いものに行っていることに気づいた。

 

 我が家の近所にスーパーやコンビニはなく、自販機の高いのを買わせてしまったか! と思った。ていうか、お茶以外のドリンクをまったく考えていなかった。

 

 スーパーで缶コーヒー、オロナミンC、C.C.レモンなど炭酸系と、スポーツ飲料、エナジーゼリー系を買い込んだ。冷蔵庫内がかつてなく非常時な感じになった。

 

 出してみたらやはり大好評。これらは単なる水分ではなくて、いわば「飲む菓子類」であり、適材適所の甘さがあるんだなあ、と思った。

 

 次はネコの話。塗装のため、家中のあちこちをポリシートと養生テープでくるまれたのだが、いろいろ詰め込んである「物置」もくるまれ、出入りできなくなった。「し、しまった!」と、叫んだのは、ネコ餌のストックを物置に入れているのを忘れていたからである。

 

 夜7時、雨模様。室内のゴハン容器の中は空。いつものフードを置いてある店はちょっと遠い自転車距離にある。しかたなくスーパーに駆け込み、適当に一袋買う。

 

 ネコは食べものにうるさくて、メーカーが変わると食が細ってしまうこともあると聞く。実際、妻が昔飼っていたネコはそういう神経質なところがあったらしい。いつものメーカーは「ちょっといいヤツ」であり、それよりお安いこの臨時餌を、うちの二匹は食べてくれるのだろうか……。

 

 結果。二匹とも、一瞬のためらいも迷いも見せず、カリカリガツガツとゴハンに食らいついた。味が変わったことにすら気づいていないかのようなその食いっぷりに、ホッとするとともに「この馬鹿ネコども……」と思った。

 

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。本連載の単行本『ごめん買っちゃった』(光文社)、『出かけ親 1』、最新刊『忍風! 肉とめし 3』(ともに小学館)が発売中!

 

(週刊FLASH 2019年12月10日号)

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