ライフ・マネーライフ・マネー

東芝も参入「血液一滴でガン発見」わずか数分で診断可能

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.01.12 16:00 最終更新日:2020.01.12 16:00

東芝も参入「血液一滴でガン発見」わずか数分で診断可能

マイテックの検査で用いる蛍光顕微鏡

 

 一方、東芝と同じく「血液一滴」でのガン検査技術を開発した中小企業がある。兵庫県神戸市のマイテック社は、2015年に「プロテオ検査」を開発し、翌年には実用化している。いまや全国約60の医療機関で採用され、これまで約5000人に検査をしてきた。

 

 もっとも、同社は巨大企業・東芝とは比較にならない、家族経営のベンチャー企業だ。創業者の長谷川克之氏(59)は、妻の両親が営む、建設機械の製造販売会社に入社。数々の特許を取得したのち、バイオチップの研究開発の世界に飛び込んだ。

 

「プロテオ検査では、『ヌクレオソーム』という物質を、ガンを判別するマーカーに使っています。私どもの技術なら、0.1mm以下のガンも、超早期の判定が可能です。ほぼすべてのガンを見つけることができ、検査の精度は約90%を達成しています」(長谷川氏、以下同)

 

 しかも検査時間は、わずか数分で完了する。その場で、ガンのリスクを判定できるというのだ。

 

「DNA、RNA、CTC(血中に遊離しているガン細胞の欠片)など、世界中で研究されているガン関連物質がありますが、ヌクレオソームに着目し、実用化したのは世界で弊社だけです。

 

 プロテオ検査で使用するバイオチップには、『過酸化銀メソ結晶』という物質を添付していて、血液を垂らすと、チップはヌクレオソームを感知し、ガンの有無を識別するという仕組みです。このチップは、EU・中国などでも特許を取得しています」

 

 論より証拠。本誌いちのベテラン記者が、プロテオ検査を受けた。正直、ちょっと緊張していた。恥ずかしながら、齢60を超え、体力の衰えを実感している。長年の暴飲暴食のツケもある。いまだに煙草をやめられない。ガンの判定が出たら、どうしたらいいんだ?

 

 記者は、自己採血キットの針で指をつつき、にじみ出た血液を小さな容器に取る(通常、医療機関では注射器で採血をおこなう)。血液を遠心分離器にかけ、分離した上澄みの血清を、プロテオバイオチップに垂らし、吸着させる。

 

「じゃあ、解析に入ります」
 コンピュータを前にした研究員が、記者の指から採取した「検体」を蛍光顕微鏡にかける。ガンは光って見える仕組みだ。そして約8分後……。

 

「結果が出ました。……A判定です」
 安堵のため息が出た。

 

 記者の数値は13960。これはヌクレオソームが発光する面積を表している。単位は平方μm(1平方mの1兆分の1)。数値が2万以下ならA判定で、ガンの可能性は低い。2万~3万ならB判定で要観察、3万以上ならC判定で、ガンである可能性が高い。検査費用は約6万円である。

 

「今回の、A・B・C判定でおこなう『リスクスクリーニング検査』だけではなく、世界中で熾烈な研究開発競争がおこなわれている『リキッドバイオプシー(液体生検)技術』の開発にも成功しています。

 

 この技術は、腫瘍が悪性か良性か、100%近く明確に識別できる技術です。短時間での検査が可能なので、将来的には、ガンの手術中に良性か悪性かを判定する、『術中迅速病理診断』などにも応用できると思っています」

 

 小さなベンチャー企業の大きな成果だ。以下では、ガン由来の物質を直接検査する「血液一滴で受けられるガン検査」を紹介する。

 

【「血液一滴」で受けられるガン検査】
●Proteo
・費用:約6万円
・開発者:マイテック
・検査の方法&特徴:
 近年、ガンは遺伝で決まるのではなく、後天的(喫煙、飲酒、ストレスなど)な影響が大きいと考えられている。後天的な情報を持つDNAとタンパク質の両方を含む、ヌクレオソームで検査。

 

●DNA検査
・費用:約45万~95万円
・開発者:多数
・検査の方法&特徴:
 DNA中には約300種類の遺伝子があり、そこからガン関連遺伝子を調べる検査が多くの企業でおこなわれているが、開発から20数年を経ても、明確な遺伝子情報は抽出されていない。

 

●RNA検査
・費用:約2万~40万円
・開発者:東芝、東レほか
・検査の方法&特徴:
 細胞内で遺伝子やタンパク質などの制御に関与する、マイクロRNAを、ガン診断の新たなマーカーとして採用。従来の同方式の検査に比べ、精度、検査時間、費用を大幅に削減。

 

●CTC検査
・費用:約40万円
・開発者:オンコリスバイオファーマほか
・検査の方法&特徴:
 7.5mlの血液中に、CTC細胞が3個以上あれば、ガン転移が疑われる。だが、遊離する量がきわめて少ないため、定量的には測りにくい。


(週刊FLASH 2019年12月24日号)

続きを見る
12

今、あなたにおすすめの記事

ライフ・マネー一覧をもっと見る