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ハシゴ酒天国「新橋駅前ビル」奇跡のビルを完全ガイド・前編

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.01.04 16:00 最終更新日:2020.01.18 09:51

ハシゴ酒天国「新橋駅前ビル」奇跡のビルを完全ガイド・前編

 

 新橋といえばサラリーマンの街。西口の通称「SL広場」で、赤ら顔のサラリーマンたちがテレビ番組の街頭インタビューに答えている、なんてシーンはおなじみですよね。もちろん良い酒場もたくさんあり、僕も大好きな街です。

 

 そんな新橋にあって、僕がもっとも好きなスポットが、SL広場とは反対側、汐留口駅前にそびえ立つ、「新橋駅前ビル」1号館&2号館。

 

 

 1966年に完成したレトロな商業ビルで、中には無数の飲食店、酒場がひしめきあい、このビルだけで幅広いパターンのハシゴ酒が楽しめてしまうんです。

 

 近年の僕は、新橋で飲む=新橋駅前ビルで飲むになってしまっているほど。今回は、その中でも特に大好きなお店について、想いのたけを綴らせてもらえたらと。

 

 現在新橋駅前ビルの建っている場所には、戦後、都内最大規模の闇市が存在していたそう。1964年の東京オリンピック後、市街地改造事業が行われ、かつてそこにあった「狸小路」という飲屋街のお店を詰めこんで建てられたのがこのビル。

 

 古い大衆酒場の味わいが何よりの好物な僕にとって、実際には味わったことのない闇市の雰囲気は、あこがれそのもの。その面影をビルの中にいながら感じさせてくれるのが、本当に嬉しいし楽しいんですよね。

 

 銀座線や都営浅草線、JR各線の改札から地下道で直結しており、その地下道を挟んで1号館と2号館の入り口があります。つまり駅直結、秒速で乾杯ができてしまうというわけ。

 

 まずは1号館の地下から探索していきましょう。
 駅から地下1階へと続く入り口の両サイドにいきなりある立ち飲み屋が、「立呑処へそ新橋駅前店」と「たち呑み 吟」。

 

 へそは新橋に数店舗を展開する人気のグループで、肉料理や串揚げなどが名物。なんでも安くて美味しく、サラリーマンのオアシスとはまさにここのこと! といいたくなる名店です。おでん3種盛りと好きなドリンク1杯で550円をはじめ、数種用意された「◯セット」が、その名の通りお得。

 

 特に僕が好きなのは「鉄板和牛ステーキセット」(980円)で、鉄板の上にモヤシ、ちょうどいいサイズのステーキ、たっぷりのフライドガーリックがのったがっつり系のセット。この肉が、本気で上等。うっとりものの、とろける美味しさなんですよね~。

 

 外せないのが通称「100ナポ」と呼ばれる「ナポリタン」。おつまみ向けの濃い味ナポリタンが適量小皿にのって、なんと100円というんだから、そのサービス精神に涙が出ます。

 

 吟は、表記のないものはすべて300円均一の小皿料理がカウンターにずらりと並ぶ、どちらかといえば日本酒に強い立ち飲み屋。ここで全体がまっ茶色になるまで煮込まれた「イカと里芋の煮つけ」なんかをつまみに、1杯300円程度から揃う地酒をくいっと傾ければ、日頃の疲れもどこへやら。

 

 その先「酒々」は、本格的な和食が楽しめる、カウンターだけの小料理屋。ここで以前出会った、マグロの希少部位「のうてん」(1500円)。赤身とサシのバランスが神々しいまでの分厚い切り身がお皿にたっぷりで、口に入れた瞬間、ぶわっと上質な脂の香りが広がり、それでいて赤身に近い旨みもしっかりと感じられ、まさに脳天がしびれるうまさでした。

 

 前の2店と比べれば多少値は張りますが、本当に美味しいものをじっくりと堪能できて、たまの自分へのごほうびに寄りたいお店。この幅広さも、新橋駅前ビルの魅力なんですよね。

 

 打って変わって、なんでも揃う正統派大衆酒場「呑み処 圭」。肉料理に魚料理、揚げ物、名物のひとつ「まぐろユッケ」に豊富なランチ、そして豊富なご飯もの。とりあえずここへ行けば、参加者全員が満足できること間違いなしのオールマイティ酒場といえましょう。

 

 家でも食べられるけれども、それをプロが丁寧に作った「チキンラーメン 卵のせ」(400円)がまたいい。麺とスープをふわりと覆う半熟卵と、小ネギのアクセント。食べすぎだとは思いつつ、ついついシメに頼んでしまう、禁断の味わいです。

 

 ビル内は、両サイドにずらりと酒場が並ぶメイン通りから、さらに小路がたくさん広がり、まるで迷宮。映画のセットさながらの古いラーメン屋やカウンター酒場が軒を連ねる風景の中を歩いていると、本気で昭和の時代にタイムスリップした気分になってきます。

 

 が、新陳代謝がないわけではなく、近隣のサラリーマンやOL、さらに近年は、わざわざこの雰囲気を味わうために遠方から訪れる人々なども多い。比較的若い層のお客さんでも違和感なく入れる小粋な新店もちらほらとあります。

 

 僕も大好きな「ビーフキッチンスタンド」はその代表でしょう。ここ、驚異のリーズナブルさと料理のクオリティの高さで、近年どんどん店舗数を増やしている勢いのあるチェーン。

 

 なんたって、目玉メニューである「名物ビフテキ」「牛ハツのレアロースト」が、どちらも290円ですよ? ちょっと信じられない。もちろんサイズは小さめなんですが、だからこそあれこれ楽しめて酒飲みにはありがたい。

 

 そして、安かろう悪かろうではなく、何を頼んでもちゃ~んとうまい! 「ポテトサラダ」や「マカロニサラダ」は110円。「生ハムサラミ盛り」や各種「アヒージョ」は199円。アルコール類は1杯290円からで、「ホッピーセット」が350円。ナカが210円。いやいや、永遠にいられちゃうでしょう、これは……。

 

 え~、本当はこのあと、1号館の1階と2階、さらに2号館についても書きたかったんですが、想いがあふれすぎて1号館の地下だけで文字数がいっぱいになってしまいました。というわけで、続きは後編にて。

 

 

 以上、パリッコ氏の新刊『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)をもとに再構成しました。混迷極まる令和の飲酒シーンに、颯爽と登場した酒場ライターが、「つつましくも幸せな時間」について丹念に紡ぎます。

 

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