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いまこそ聴け!若手の女性落語家の活躍がめざましすぎる

ライフ・マネー 投稿日:2020.01.27 16:00FLASH編集部

いまこそ聴け!若手の女性落語家の活躍がめざましすぎる

「男らしく演じる」立川こはる

 

 若手の女性落語家の活躍がめざましい。とはいっても、女性落語家の絶対数は少ない。大学の落研には上手くて面白い女子が大勢いるのに、彼女らはほとんどプロを目指さない。

 

 2019年9月に東京の女性落語家を数えたところ、「真打&二ツ目」で25人。その他に前座が6人、人数が把握できない「見習い」も数人いるはずだが、そんな程度だ。東京の落語家全体の数は約600人と言われる中での三十数名だから、男性に比べて女性の落語家は圧倒的な少数派だ。

 

 

 女性落語家が少ない理由としてまず考えられるのは、伝統的に「落語は男が演るもの」とされてきたということ。1993年に三遊亭歌る多と古今亭菊千代が東京で初の女性真打になった際には「女流真打」という別枠を設けるべきではないかという議論があったほどだ。

 

 その伝統の中で「老若男女を男性が一人で演じるもの」として磨き上げられてきた古典落語を女性が演じるのは無理がある、だから女性の落語家は女性のために作られた新作落語を演るべきだ、と提唱したのは三遊亭白鳥だ。

 

 白鳥は2010年、それを女性落語家たちが実践するきっかけを与えるために、自らプロデュースする「The Woman’s落語会」を立ち上げた。若手の女性落語家たちが白鳥に教わった噺を演じるこの会は2015年まで12回開催された後、2016年末に2夜のスペシャル企画として復活。

 

 2018年3月には「第14回」が内幸町ホールで開かれ、三遊亭粋歌、立川こはる、春風亭ぴっかり☆、林家つる子がそれぞれ白鳥作品を独自にアレンジして演じた。この4人はいずれも人気の女性二ツ目だ。

 

 白鳥の言う「女性は女性向きの新作を演ればいい」という指摘は一面の真理である。ただ、プロの落語家になる女性はたいてい「古典が好きでこの世界に入った」と言う。そんな女性たちが、男性に交じってどのように個性を発揮していけばいいのか。

 

 その「モデルケース」となるべき存在が、2017年に真打昇進した柳亭こみちだ。2006年に二ツ目となったこみちは、当初から「まっすぐな古典」をきっちりと演じる女性落語家として着実に活動の基盤を広げていった。

 

 女性の着物で高座に上がり、ルックスも女性らしい可愛さを備えたこみちだが、持ち前の「古典の技量」の確かさゆえに「女性が古典を演ることの不自然さ」を感じさせなかった。

 

 だがこみちは「まっすぐな古典」とは別に、『蚤のかっぽれ』『植木のお化け』『虱茶屋』といった「音曲や踊りなどの “飛び道具” が入る噺」を積極的に覚え、これを自らの武器にしていった。

 

 白鳥は、そんなこみちにも「女性のための新作」を教えた。最初は2008年9月、独演会のゲストとしてこみちを呼んで自作の『ナースコール』を演じさせたのである。さらに白鳥は「The Woman’s落語会」を始めると、こみちに『白鳥版明烏』や『女泥棒』、『姫と鴨』等の作品を提供している。

 

 これらは古典の世界観を新作に持ち込んだもので、現代を舞台にする『ナースコール』とは異なり、「古典のこみち」を求めるファン層にも受け入れられやすかった。

 

 さらにこみちは桂枝太郎が狂言を落語に作り替えた『附子』、古今亭駒治の『ガールズトーク』を江戸の長屋の女性たちに置き換えた『うわさ小町』といった作品も自分のレパートリーに加えている。

 

 現在、こみちは「古典」「飛び道具の入る噺や珍品」「女性が活躍する、女性にしか出来ない噺」を自身の3本柱としている。そして、その柱のひとつである「古典」においても、かつてのように「まっすぐに演る」だけではなく、『富久』で日本橋石町の旦那のお内儀さんを登場させたり、死神が爺さんではなく婆さんの『死神』を演じたりと、「女性ならではの工夫」を重ねている。

 

 こうしたこみちの挑戦は、今後の女性落語家にとって、ひとつの指針となるのではないだろうか。

 

■古典を演ってもちゃんと聴かせる腕がある

 

 現在の二ツ目では三遊亭粋歌、立川こはる、春風亭ぴっかり☆の3人が、それぞれの流儀で「女性落語家のあり方」を明確に示している。

 

 三遊亭粋歌はもともと古典の演者だが、「古典を深く知るには新作を創ってみるといい」との先輩からのアドバイスで創り始めた「女性ならではの新作」で人気に火が点いた。

 

 粋歌の新作は、単に女性の登場人物を前面に出して活躍させるだけではなく、「女性の視点で物事を捉える」からこそ面白い。つまり「男性にはない発想」の新作なのだ。

 

 粋歌は三遊亭白鳥作品も手掛けているが、それらは白鳥が女性のために書いたものではなく、白鳥が自ら演じている作品を「自身の視点で練り直した」もの。

 

 白鳥が示唆した「女性は新作をやるといい」という方法論を、粋歌は自らの才能で独自に発展させているのである。

 

 男性の着物で高座に上がり、女性要素をほとんど感じさせない「男前な江戸落語」を演じるのが、立川こはる。彼女は「女性の声で古典を演じる」ことに不自然さを感じさせない技量の持ち主だ。

 

「落語の上手さ」が「女性であるというハンデ」を跳ね返しているという点では二ツ目時代のこみちに通じるものがあるが、こはるは「男らしく演じる」点で徹底しており、そもそも彼女を「女性落語家」というカテゴリーに入れることの方が不自然に思える。

 

 こはると正反対に、「女性であること」を前面に出して演じることが魅力となっているのが春風亭ぴっかり☆だ。彼女は師匠の小朝直伝の『元禄女太陽伝』のように女性主人公が活躍する新作落語も持っているが、『お見立て』の喜瀬川や『権助提灯』の妾といった、古典に登場する女性の「女らしさ」を強調することで、個性を発揮している。

 

 キュートなルックスでアイドル的な人気があることが却って正当な評価を妨げているきらいがあるが、ぴっかり☆は物語をきっちり表現する技量を備えている。「古典に自分の演出を大胆に持ち込む」ことが当たり前になっている現代落語界において、ぴっかり☆が試みている「古典の中の “女らしさ” を武器にする」方法論は効果的だ。

 

 今あげた4人に共通しているのは「当たり前に古典を演ってもちゃんと聴かせる腕がある」ということ。ここが重要なポイントだ。「女性には古典は無理だ」と思わせる演者は、女性云々の前に「落語がヘタ」なのである。

 

「古典・飛び道具・女性ならではのネタ」の3本柱を武器とするこみち、「女性の視点による新作」を創り続ける粋歌、「女を感じさせない」こはる、「女らしさを武器にする」ぴっかり☆。彼女たちが道を切り開いてくれると、僕は期待している。

 

 

 以上、広瀬和生氏の近刊『21世紀落語史 すべては志ん朝の死から始まった』(光文社新書)をもとに再構成しました。ほぼ毎日落語を聴いている『BURRN!』編集長だから語れた「落語盛衰記」です。

 

●『21世紀落語史』詳細はこちら

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