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一風堂も凪も大行列…「ラーメン」がアメリカで独自に進化中

ライフ・マネー 投稿日:2020.02.19 06:00FLASH編集部

一風堂も凪も大行列…「ラーメン」がアメリカで独自に進化中

一風堂のオープン

 

 2月14日、アメリカのクパチーノ市 (カリフォルニア州)のショッピングモールに人気ラーメン店「一風堂」がオープンし、店の前に長蛇の列ができた。

 

 先頭は地元の高校生。大学受験の結果待ちの時期で、比較的ヒマだからと開店3時間前に並び始めたという。リボンカットセレモニーのときにはおよそ250人が並び、ショッピングモールの端まで列が伸びた。客の一部は折りたたみ椅子を携帯し、長期戦に備えていた。

 

 実は、アメリカでは、人気ラーメン店に人が並ぶのはすでに当たり前の光景である。

 

 

 新宿に本店のある「ラーメン凪」の米国1号店も、いつも人だかりで、週末の夜は、並びきれない人たちが隣りのブロックまで列を作る。

 

 整理券を出す有名ラーメン店では、整理券をもらうためにまず並び、いったん家に帰ってからまたあとで食べに来るスタイルを苦とも思わない客が増えてきた。行列に耐えた後の入店時に響く「いらっしゃいませ」の声に異文化を感じるアメリカ人も多い。

 

 

凪の行列

 

 アメリカのラーメン文化は意外に長い。日清が1971年にインスタントラーメンを売り出してから、知名度は一気に向上した。当初は麺にプラスチックが入っているなどのデマも広がったし、カップヌードル1個が1ドルしない価格設定だったことから、貧乏人の食事の代名詞ともなって、イメージは芳しくなかった。

 

 そんななか、ボウルラーメンと呼ばれる専門店が出現し、ラーメンのイメージを一変させた。

 

 2004年、モモフクヌードルバーというラーメン専門店がニューヨークにオープンしたのを皮切りに、専門店の数が増加。食材をたくさん入れて作ったスープにこだわりの麺、値段は1杯10ドル代が主流で、もはや貧乏人の食事ではなくなった。

 

 いまやニューヨークではラーメンマップを配布するほどの人気で、シカゴやボストン、ロサンゼルスといった都市でもブームが始まっている。それは、シリコンバレーでも例外ではない。

 

 レストラン情報サイト「Yelp」に「ラーメン」と入れて検索したら、シリコンバレーだけで200軒以上の店が並んだ。メニューの一部にラーメンを扱うアジア料理店も入っているので、正確な数はわからないが、少なくとも30以上の専門店がある。

 

 店の外まで行列ができる人気店は、やはり日本資本か日本人の経営する店が圧倒的に多いが、日本とは少し違った光景もある。ワインをペアリングして楽しむ人が多いので、ワインメニューの充実した店が多いのだ。

 

一風堂の店内

 

 もともと熱々のものを食べる習慣がないので、わざと少し冷ましてから出す店も多い。客がやけどしたら訴えられるからだ。客はフーフーと冷まさないし、ズルズルと音を立てないので静かだ。

 

 残った食事は容器に詰めて持ち帰る習慣なので、食べ残したラーメンも平気でテイクアウト。理由を尋ねると、夕飯にするとか主人にも食べさせたいとか、スープを次の料理に使いたいとの答えだった。

 

 もちろん、ウーバーイーツでもラーメンが届く。どの店舗もアメリカ人にわかりやすいようにメニューに工夫がこらされている。

 

 スープを「ホワイト」「レッド」と色で区別したり、「1:スープ、2:麺、3:トッピング」とわかりやすい図で説明しながら順番にオーダーしていく店もある。

 

 牛や豚を食べない人も多いので、チキンベースのメニューやベジタリアン向けメニューを用意している店も多い。一風堂は味噌豚骨のスペシャルメニューを作り、店舗ごとのバラエティを増やしている。

 

 ブームの火付け役となったモモフクがサイドメニューに「バンズ」と呼ばれる中華風蒸しパンに豚の角煮をはさんだものを用意した影響か、アメリカでは角煮のバンズを揃える店が目立つ。

 

 トッピングも進化している。全米の人気メニューを調べてみると、麺の上にソーセージや目玉焼き、ベーコン、スパム、バジルとオリーブオイル、ピーナッツ、ルバーブのキムチ、ロブスター、ザリガニ、ルッコラ、ライムなどを載せたものが出てきた。モッザレラチーズやパルメザンなど、チーズ載せも人気である。

 

 さらに他国籍メニューとして、トムヤムスープ、タヒニ(生ゴマのペースト)味噌スープなども。ユダヤ料理のマッツォボール(すいとんのような団子)入りラーメンも人気だそうだ。

 

 このように、ラーメンは長い年月をかけてアメリカで独自に進化を遂げてきたのだ。(取材・文/白戸京子)

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