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イノベーションを起こす人材は「ゴレンジャー」で考えろ
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.03.09 16:00 最終更新日:2020.03.09 16:00
「大企業でありながらイノベーションを起こし続けている会社といえば?」と聞かれれば、私はAmazonの名をあげるだろう。Amazonはまさしく「イノベーションの会社」である。同社はこれまで52個の事業を立ち上げ、18個の事業を潰している。
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当初、新刊書籍のECサイトだった同社は、2001年にいわゆる「マーケットプレイス」という仕組みを導入した。これは、個人も含めたAmazon以外の業者が、中古の書籍を販売できるプラットフォームである。
マーケットプレイスが、Amazonの既存ビジネスとカニバる(食い合う)のは言うまでもない。顧客がマーケットプレイスで古本を買うようになれば、Amazonが抱えている新刊の在庫はその分、売れないようになるからだ。
それだけではない。中古書籍がいくら売れても、版元や著者には印税が入らないため、彼らからも猛反発があったのだ。それでもCEOのジェフ・ベゾスは、人々を敵に回しながらマーケットプレイスを開始したわけである。
また、電子書籍サービスであるKindleを開始したときにも、これと似たような決断をやってのけている。電子書籍の販売も、マーケットプレイスと同様、紙の新刊の売上に対してはマイナスに作用するだろう。
このときベゾスは、のちにKindleやEchoといったプロダクトを生み出すことになる「Amazon Lab126」というプロジェクトを立ち上げた。そして、当時の書籍ビジネスのトップをそのプロジェクトに加入させて、こう伝えたという。
「明日からの君の仕事は、昨日までの君の仕事を全部叩き潰すことだ」
このような、ある意味では異常ともとれる意思決定を、やすやすとベゾスが繰り返せるのは、単に強力なリーダーシップがあるからだけではない。彼を突き動かしているのは、同社のビジョンにもある「地球で最も顧客中心の会社」になるという信念だ。
■スタートアップを成功させるキャラクター分担
ジェフ・ベゾスが提唱する「ピザ2枚ルール」をご存知だろうか? 新しいビジネスを生み出すときには、ピザ2枚分で足りるくらいの人数構成(4~5人)が最適だと彼は語っている。
実際、スタートアップなどを見ていると、それくらいの規模のチームを組成できている会社はうまくいくことが多い。さらに、その構成メンバー内では、特撮ヒーロー「ゴレンジャー」のようなキャラクター分担が見られる。
◯アカレンジャー(Visionary)――情熱とパッションを持ってチームを引っ張るリーダー。CEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)タイプ。ビジョンに基づいてビジネスやプロダクト全体のロードマップを描ける人
◯アオレンジャー(Hacker)――冷静にプロダクトを生み出せる開発者。CTO(最高技術責任者)タイプ。すばやくプロダクトを開発して、常に改善することができる人
◯キレンジャー(Hustler)――チームビルディング・採用など、人間関係をつくるスペシャリスト。CHRO(最高人事責任者)タイプ。パッションを失うことなく、しかし同時に、多くのカスタマー・ステークホルダー・提携先候補に目を配れるだけのビジネスセンスを持つ人
◯モモレンジャー(Hipster)――人が思わず使ってしまうプロダクトをデザインできるデザイナー。CDO(最高デザイン責任者)タイプ。デザイン性の高いUX/UIを設計・実装できる人(機能だけでは、プロダクトは簡単にコモディティ化する)
◯ミドレンジャー(Strategist)――リアリスティックな成長戦略を冷静に立てる参謀。CFO(最高財務責任者)やCSO(最高戦略責任者)のタイプ。カスタマーからの定量/定性データを元にビジネスのキードライバーを探り、具体的な戦略を策定できる人(メンターでもいい)
新規事業をうまく回すには、こうした人材が必要なのだ。
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以上、田所雅之氏の新刊『御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学』(光文社新書)をもとに再構成しました。ベストセラー『起業の科学』著者が大企業に舞台を移して、イノベーションを科学します。
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