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週刊現代「内視鏡・腹腔鏡手術が危険」ってどこまでホント?
ライフFLASH編集部
記事投稿日:2016.07.31 15:00 最終更新日:2016.08.23 15:47
「週刊現代」の医療特集が医師や患者、その家族に波紋を投げかけている。週刊現代は「飲み続けてはいけない薬」特集を皮切りに、医療現場に疑問をつきつける特集記事を連載中だ。それに対して、「週刊文春」が「ウソ」「根拠なし」「デタラメ」と嚙みついた。
週刊文春が否定したもののひとつが、週刊現代7月2日号に掲載された〈内視鏡・腹腔鏡手術 やっぱりこんなに危ない〉だ。
内視鏡手術とは、胸やお腹に5mm〜2cm程度の小さな穴を開け、内視鏡や細い手術器具を入れておこなう手術のこと。腹腔鏡もお腹に入れる内視鏡の一種で、患者の負担が少なく、術後の回復が早いとされることから急速に普及した。
たとえば、がん研有明病院では、大腸ガン手術の95%(2014年)で採用されるに至っている。
しかし、週刊現代は腹腔鏡手術を〈非常に高度な技量が要求され、一歩間違えれば「死」のリスクを伴う〉手術だと断言。 〈「がんの転移を見落とす」可能性が高い〉〈再発が多い〉〈患部の状態が把握しづらい〉と問題点を列挙している。
週刊文春は胃ガン、大腸ガン、直腸ガンそれぞれで、開腹手術に比べて腹腔鏡手術のほうが死亡率が低いことを指摘。〈「開腹手術の方が危ない」と言うべきではないか〉と結論づけている。
こうも結論が違っては、高齢者や家族は混乱してしまう。そこで、真実はどこにあるのか。世田谷井上病院の井上毅一理事長は腹腔鏡手術のリスクをこう話す。
「内視鏡手術はドクターの視野が狭くなるため、小さなガンの転移を見逃す可能性があるのはたしかです。それに、実際に開腹をしてみないと、病巣の広がりがわからないこともある。
内視鏡手術は患者の体力的負担が少ないというけれど、盲腸などは1時間かかることもありますからね。開腹手術なら十数分で終わることもあります」
山野医療専門学校の中原英臣副校長は「腹腔鏡手術のいちばんの問題は、不適切な手術がおこなわれていても、それを制御できるシステムになっていないことです。一般的に、医者はお互いに干渉しませんから」という。
2014 年には、群馬大学病院、そして千葉県がんセンターで、腹腔鏡手術を受けた患者の死亡が相次いで発覚したのがその最悪の例だろう。信頼できる主治医を選べれば「まな板の鯉」でもいいかもしれないが、残念ながら、このようなとんでもない医師はいる。
だが、元東京大学病院助教で、ガン外科と腫瘍内科の2つの専門的見地からガン相談をおこなう治療医・大場大氏はこう話す。
「群馬大学の事件のようなことがあったからといって、腹腔鏡手術すべてが危険だということにはならない。腹腔鏡手術に関しては、肝臓や膵臓などの肝胆膵領域と、消化管領域は分けて議論しなければいけません。
胃ガンなどの消化管領域への腹腔鏡手術はかなり普及していて、経験のある医師も多い。開腹手術より患者さんの負担が少ないことは間違いありません。
医療は一人ひとりの問題。個別の事情に合わせてやっていくことにしか正解はありません。患者さんやご家族の皆さんは、まず情報に対してアンテナを張る。そのうえで批判的なスタンスも忘れてはなりません」
愛和病院(長野市)で副院長を務める緩和ケア医師・平方眞氏はこう訴えた。
「本当はメリットのほうが圧倒的に大きいのに、不安になってしまう患者さんが出てきています。記事を読んで、かかりつけの医者に相談に来る人はまだいい。病院に行かなくなる方、薬を飲まなくなる方もおそらくいると思うんです。
記事では出世や金儲けのために手術をしたり薬を処方しているように書かれています。そんな医者はいません。『医者は信用ならない』と思わないでほしい」
(週刊FLASH 2016年7月19日号)