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医師が解説「カロリー制限にダイエット効果なし」の理由
ライフFLASH編集部
記事投稿日:2013.11.22 07:00 最終更新日:2016.03.03 23:12
高カロリー食品に課税をーー。10月末、メキシコの議会で、高カロリー食品に8%の税金を課すことが決まった。米国を抜き肥満率トップになったことが理由だという。この施策の前提は「肥満の原因は摂取したカロリーと消費したカロリーの不均衡である」という考え方だ。
「摂取カロリーを減らす」という食事制限は、いまもダイエットの主流だが、この味気なく侘しい減量法はじつはほとんど効果がない。
’90年代、米国国立衛生研究所が2万人の女性に、1日あたりで360キロカロリーの減食を8年間にわたっておこなった結果、彼女たちは1人あたり平均で約1キロ減量しただけだった。しかも、ウエスト周りは増えていたのだ。
「消費カロリーを増やす」、つまり運動によるダイエット効果にも疑問符がつく。スタンフォード大が1万3000人のランナーを対象におこなった研究では、なんと全員が歳を重ねるごとに体重が増える傾向があることがわかった。練馬光が丘病院「傷の治療センター」長の、夏井睦医師が語る。
「しかも、運動すればおなかが減る。摂取カロリーもどうしても増えてしまいます。運動だけで減量や体型を維持しようというのは、かくも無謀で大変なことなのです。そもそも、肥満の原因はカロリーではない。減量に成功した人は、脂肪を摂る量を減らしたからではない。炭水化物=糖質を摂る量が減ったことによってやせたのです」
夏井氏は、糖質制限さえしていれば、たくさん食べてもやせていくと語るが、それはどうしてなのか。その手がかりになるのが、’62年、ミシガン大学のジェイムス・ニールによって提示された仮説だ。
人類は、誕生してから多くの年月を飢えとの闘いに費やしてきた。そのため、少ないカロリー摂取でも生体を維持し、少しでも余ったエネルギーができると貯め込めるように進化してきた。その過程で獲得したのが、脂肪として蓄えることができる炭水化物だった。慢性的な飢餓状態のなか、エネルギーを脂肪として蓄えることができる炭水化物は、救世主だったーー。
だが、飽食の今、脂肪を貯めこむ必要はない。そこで、糖質制限をすると、余計な脂肪の蓄積がなくなり、さらに体内のエネルギーが効率よく消費されるのだ。
「人類が穀物を中心とした食事を始めたのは、1万2000年前のメソポタミアやエジプト文明のときに穀物の栽培が始まってからにすぎません。じつは消化管の構造からすると、人はもともと肉食動物。わざわざ無理して炭水化物を摂る必要はないのです」(夏井氏・以下同)
だが、私たちの多くはいまだに既成概念に囚われ、無根拠なカロリー信仰によって、摂取カロリーさえ抑えればいいと考えている。
「人類の進化をみれば、穀物が弊害になっているのは自明の理なのに、これまであやふやな栄養学を鵜呑みにしてきた。それで、ますます問題の本質から遠ざかってしまっているというのが真実の姿なのです。それでもコメがやめられない人は、コメに支配されているも同然です」
(週刊FLASH 2013年12月3日号)