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新幹線“安全神話”支える「ドクターイエロー」に乗せてもらった

ライフFLASH編集部
記事投稿日:2014.01.09 07:00 最終更新日:2016.03.03 23:08

 昭和39年に産声をあげた東海道新幹線は、今年50歳を迎えることになる。その間の乗車中の旅客の死傷事故はゼロ。「安全神話」と讃えられてきた。今回はその神話を支える現場に密着するため、JR東海に取材を敢行し、秘密のバックステージにまで入れてもらったーー。

 

 12月中旬、都内某所、厳重なセキュリティを受けて案内されたのが「新幹線総合指令所」だ。列車の運行や各地の気象、施設の状況といった東海道・山陽新幹線に関するすべての情報はここに集められ、それぞれに的確な指令を伝えることで安全な運行を守る“新幹線の頭脳”である。

 

 フロアの全面には巨大な総合表示盤があり、ここに列車の運行状況が表示される。それを見るかたちで「輸送列車指令」「施設指令」「信号通信指令」などそれぞれの役割を持った6つの指令セクションが置かれている。台風などの時には各指令間で協議され対応や方針を決定、列車や駅などへの指示がここから出されることになる。

 

 取材当日は天候も穏やかで司令所内は静かだった。が、ひとたびダイヤが乱れると、フロアには怒号が飛び交い戦場のような雰囲気になるという。特にこの季節は積雪による運行の遅延が多くなるため、司令所の役割はさらに大きくなる。ピーク時には東京−新大阪間で80本以上が運行する新幹線を見守っているだけではなく、夜間の保守作業や電力供給の監視などもおこなうため24時間態勢で動いている。

 

 万が一、東京で巨大地震があり停電しても心配はご無用。この司令所には発電施設もあるため自家発電により業務を遂行することが可能だ。じつは東日本大震災の当日も東海道新幹線は夕方から運転を再開していたのだという。

 

 大阪にも司令所があり、もしものときはそこから指令が出せるようになっているというから、安全対策は万全といえそうだ。

 

 続いて、軌道に異常はないかを確かめる「新幹線のお医者さん」を取材した。

 

「見ると幸せになれる」

 

 鉄道ファンのあいだでこう言われている車両が、東海道・山陽新幹線で電気設備や軌道設備などの状態を確認するために走っている「ドクターイエロー」。正式には「新幹線電気軌道総合試験車」という。運行情報が時刻表に掲載されることはないが、「時刻表を神業的に読むファンが探りあてる」(鉄ママ)そうで、ホームに止まっているときは大勢のファンが集まる。

 

「昭和49年から0系をベースにしたドクターイエローが210キロで計測を始めました。現在はJR東海が平成13年に導入した700系ベースと、JR西日本が平成17年に導入した同じく700系ベースの計2編成が、営業用車両と同じ速度である270キロで走っています。のぞみのダイヤで1カ月に3回、こだまのダイヤでおおむね2カ月に1回の検測をおこなっています」(JR東海広報)

 

 車両は7両編成。ステップを上がりシートに座ると、小窓からパンタグラフを確認するための「観測ドーム」があり、常時カメラが撮影している。パンタグラフは前後に2つ。ひとつは車両を動かすための集電用、もうひとつはパンタグラフとトロリ線(架線)の接触幅などを測定するためのものだ。

 

 1号車と7号車の両先頭車両には「前方監視カメラ」が設置されていて、構造物に異常がないかなどをチェックしている。測定用パンタグラフから2万5000ボルトの電気が高圧室の測定機に流れ、電機関連のデータは1号車の測定台に送信される。検測員のミーティングルームや休憩室もあったが「運行中はずっと検測データを取っているので検測員が休憩することはないですが」と広報担当。

 

 なんらかの「目標値を超える値」が検測された場合、沿線に張り巡らせてあるケーブルを通じて瞬時に東京の施設指令などメンテナンスを担う関係部署に伝送されるのだ。「同時にデータは車内のUSBメモリーなどにも保存され、検測終了後にコンピューター処理されて中央のサーバーに蓄積されます」(広報担当)

 

 安全神話の陰には、社員たちのたゆまぬ努力があった。

 

 

(週刊FLASH 2014年1月21日号)

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