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【ヤンキー漫画伝説】『GTO』作者が語る「キーワードは脱童貞」
ライフFLASH編集部
記事投稿日:2016.05.14 15:00 最終更新日:2016.05.14 15:00
1990~96年連載の名作『湘南純愛組!』がヒット作になり、マガジンの看板作家となった藤沢とおる先生が当時を振り返る。
「担当編集から『次はヤンキーもので書いてみないか』と誘われたんですね。もともと、自分は横浜銀蝿や金八先生世代なので、ヤンキーには詳しかったですし、即OKしました。最初は高校時代を過ごした北海道を舞台にする予定だったのですが、担当から『北海道なんて売れねえぞ、湘南だよ!』と言われてタイトルも決まりました(笑)」
それまでのヤンキー漫画といえば「学ラン」や「ボンタン」、髪型は「パンチパーマ」といった「番長型ツッパリ漫画」が多かった時代。一方、純愛組は「ブレザー」で「金髪」「ロン毛」「タトゥ」とかなり洗練された現代漫画であった。
「『ビー・バップ・ハイスクール』(1983年連載開始)が流行した後、どんなヤンキー世界を描くべきか考えて、実際に湘南へ行ってヤンキーの新しい服装や言葉遣いなどを直接取材しました。今でも彼らのことは好きですよ。上昇志向は強いし、みんな礼儀正しいコばかりですしね」
喧嘩、バイク、脱童貞と、男子が好きなものが詰まった純愛組は、名作揃いの当時のマガジン誌上でも常に人気は上位。
「男性だけでなく、女性ファンも多かったです。キャラの人気投票をやったとき、龍二は『彼女を大切にしそう』と人気が高いのは納得なのですが、英吉を選ぶのはなぜかヤンキー女子だけ(笑)。ちなみに冴島は男女通じて1票も来なかった(笑)」
純愛組が終わってわずか1カ月後、続編の『GTO』がスタートした。鬼爆コンビの片割れ・鬼塚英吉を主人公に据えた学園 教師もの。反町隆史主演でドラマ化され、最終回の視聴率は35 .7%を記録(関東地区・ビデオリサーチ調べ)するなど、社会現象に。
じつはタイトル「GREAT TEACHER ONIZUKA」は後づけだった。
「タイトルの由来はシニータって人が歌ってた当時流行のディスコソング。担当編集がつけました。最初は『GTO? そんなダセぇタイトルで売れるかよ』って思っていたんですが、口にしているうちに馴染んできたので。
初めは『鬼爆コンビを主人公に』と依頼されて、上京した2人でバイト面接に落ちまくるみたいな話も考えました。でも、鬼塚を主人公に話を進めるとすごくしっくりきて。舞台の吉祥寺は当時私が住んでた場所です」
鬼塚が教師を志したきっかけも、前作同様「脱童貞」だ。
「描くにあたり、先生に取材はしましたが、『うちの学校にイジメはありません』とか、当たり障りのないことしか聞けなかったですね。なので鬼塚のモデルはいません。ニュースが好きで見ていたので、教育問題などはそれをネタにしてました。内山田とかは、昔のムカつく教師を思い出しながら考えてましたね。
お気に入りのキャラですか? 神崎麗美(うるみ)ですね。美は海外でも人気あるんですよ。じつは鬼塚と冬月あずさ先生が結婚するところまで話を考えていたのですが、お蔵入りに。でも、現実の2人が結婚されましたね(反町隆史と、冬月を演じた松嶋菜々子)」
週刊連載のキツさから、一度だけ〝原稿を落としてみた〟こともあったという。
「箱根で温泉につかってました(笑)。ムチャクチャ怒られました。一度きりですよ」
2012年と2014年にはEXILEのAKIRA主演でドラマ第2弾も放送。 「AKIRAくんが金髪にしてくれて嬉しかった」と話す藤沢先生は、今もヤングマガジンで『GTO パラダイス・ロスト』を連載中だ。
「もう鬼塚を書きだして26年。偶然生まれた作品で、こんなに長くつき合うとは思ってなかった。今ではライフワークですね」
ふじさわとおる 49歳 北海道出身 1989年「マガジンフレッシュ」掲載の『LOVE YOU』でデビュー。ヤングマガジンで連載中の最新刊『GTO パラダイス・ロスト』第4巻が発売中
(FLASHダイアモンド 2016年4月30日増刊号)