500人超の乳房に肉薄した男が語る「乳道」の真髄

　世に「おっぱい愛好家」は多かれど、純粋に乳房と向き合えている目利きはどれほどいるだろうか。カップ数や年齢、顔つきや「持ち主」のネームバリュー……。おっぱいには、見るものを惑わすよけいな情報がつきまとうからだ。

　そんな風潮と距離を置き、約25年にわたり、素人女性500人以上のおっぱいを間近で撮影してきたのが、カメラマンで作家の伴田良輔氏だ。

「僕は、おっぱいを○○型と分類したり、形容したりするのもイヤなんです。代わりに、あの美しい曲線を数学的に表わせるか分析したことはあります。しかし……わかったのは、おっぱいの神々しさだけでした」

　伴田氏は、その神々しさに赤ん坊のように向き合いながらも、作家として言語化にも努めてきた。今回、縦1m大に引き伸ばされた乳房写真に囲まれた空間で、伴田氏のおっぱいへの思いを聞いた。それをまとめたのがこの「乳道」である。

「私が目指すのは、股間を刺激するのとは違う幸福感。クラシックを聴き、お茶を飲みながら眺められるエロスです。その境地を皆さんにも感じてほしい」

　瞬間的に燃え上がり、果てて終わりとなるよりも、朝から夜まで常にオーガズムを感じていられる。伴田氏の「乳道」が目指すのはそんなエロスだ。

「目の前のおっぱいには、百の神話に勝る力がある。まずは、先入観を持たず眺めてみてください」

【乳道七カ条】

一、 乳房はサイズではない。どんな乳房にもそれぞれに魅力がある。

「女性を撮りつづけていると、乳房は日々、表情やサイズを微妙に変えていることがわかります。カップ数を気にしたり、『釣り鐘型』『加水型』などに分類することに意味はない。女性がブラジャーを選ぶときの実用性は否定しませんが、男は振り回されなくていい」（前出・伴田氏、以下同）

二、 乳房は横から見た曲線のラインが美しい。

「乳房は横から見たラインが美しい。無垢な赤ん坊が片方のおっぱいに焦点を合わせていくように、どちらかのおっぱいに絞って撮ることが多い。横を向いたときの鎖骨から乳首にかけての緩やかなカーブや、乳房の下半分の半円のカーブに激しく誘惑されます」

三、おっぱいには「素顔の表情」が、いとおしいほど素直に出る。

「顔はメイクひとつで別人のように変わってしまいますが、おっぱいには『素の表情』が、いとおしいほど素直に出ます。それを過剰に演出すると、精妙なフォルムが台無しになる。だから私は、これみよがしな『おっぱい見せます』といった写真が苦手なのです」

四、乳輪は宇宙の星雲のように螺旋形を描いている。

「あるとき写真を現像していて気づきました。乳輪の点々をたどっていくと螺旋状に渦を巻いていることを。見ていると、ブラックホールのように中心に吸い込まれていく。私は乳首を撮っているとき、まさしく宇宙を眺めている天文学者になった気分になります」

五、左右非対称でもいい。自然なおっぱいにこそ言い知れぬ味わいがある。

「自然というのには、十分に成長しきっていない若々しさも含みます。左右非対称だったり、重力で自然にたるんでいてもいい。繰り返しますが、『巨乳』『微乳』という分類に憤りさえ感じます。本物のおっぱいの前では、言葉は無力で誰もが平等なんです」

六、乳房は人を興奮させるが、心を鎮めもする。

「僕はこれが言いたいのです。赤ん坊のころは男も女もなく、みんなおっぱい好きの生き物だった。おっぱいは安心感を与える存在。攻撃的な性欲で見るのではなく、お茶を飲みながら鑑賞するような心境に達してほしい。『ムラムラ』よりも『ジワジワ』くるエロスを」

七、日本女性のおっぱいは世界に誇れる美しさだと断言したい。

「これは半分は願望です。米を食べて生きてきた肌のきめの細かさ、着物で抑圧されていた時代からの解放感。現代女性は自然なおっぱいを育んでいることに誇りを持っていい」

はんだりょうすけ　1954年生まれ　版画家、翻訳家としても活動。写真集『乳房のある情景』（シンコーミュージック）が発売中。

（増刊FLASHダイアモンド 2017年4月28日号）