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1日に1億個作られる「精子」成長するには80日間も必要
夜バナFLASH編集部
記事投稿日:2018.04.27 20:00 最終更新日:2018.04.27 20:00
それは母なる川を遡上する鮭の大群のような光景かもしれない。全長わずか0.06ミリの精子にとって、目的地までおよそ20センチ弱の距離は、人間の身長に換算すると約6キロメートルの旅路となる。
膣内に射精された数千万〜数億個の夥しい精子の群れが、子宮の内奥にある卵管の先端部でひっそりと待つ卵子を目指し、競い合って泳ぐ。
膣内の酸にさらされ、障害物のような内部の襞を乗り越える過酷な競争に耐えて、最後に卵子を取り囲む精子は数十〜数百個にまで激減する。
そして最後の関門が卵子の周囲を覆う透明帯だ。このとき精子たちは卵に潜り込もうと先体反応を起こす。頭部を保護していた先体の外膜が破れ、卵子の透明帯を溶かすための酵素(ヒアルロニダーゼとアクロシン)が分泌される。
最初に卵子の透明帯を通過した精子の頭部が卵子の細胞膜に接着すると、透明帯は一瞬で性質を変え、ほかの精子の侵入を受けつけなくなる。こうして誰よりも早く卵子に到達した一匹だけが卵子と結ばれ、受精に至る。
ヒトの精子は、頭部と中片部と尾部に分かれている。尾部は卵子をめがけて泳ぐためについている。
運動のエネルギーとなるのが、中片部のミトコンドリア。頭部には1本の性染色体(XもしくはY)と22本の常染色体が入っている。X染色体を持つ「X精子」が卵子と受精すると女の子、Y染色体を持つ「Y精子」が卵子と受精すると、男の子が生まれる。
性別の決定権は精子にあるのだ。
そして遺伝情報を伝えるのが常染色体だ。これこそが、精子の重要な役割だと言うのは、生殖医療の権威である浅田レディース名古屋駅前クリニックの浅田義正院長である。
「もともと精子はDNAというデータをがっちり圧縮したようなもので、そこにエネルギー源のミトコンドリアをくっつけて、尻尾をつけただけのものです。DNA以外は、精子が卵子に行き届くためのもので、DNAを無事に運び込みさえすれば、あとは用ずみです。
精子の役割は人間の設計図の半分を持ち込んで、卵の新しい生命活動のスイッチをオンにする。それだけです。言ってみれば、精子のよし悪しは、生きているかどうか、DNAが壊れていないかだけです」
精子はすさまじい大量生産だ。一日に約1億個作られる。精子のもととなる精原細胞は思春期に精通を迎えたときから約80年間作られ続ける。精原細胞から精子に成長するまでに約80日かかるが、通常空間では数時間で死滅する。
大勢のライバルと過酷な競争を繰り広げ、勝ち残った一匹だけが卵子に受け入れられる。選ばれた一匹も遺伝子を残せば、あとは用ずみとなる。精子は辛い。
(週刊FLASH 2018年4月10日号)