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100人に1人は無精子症!?「男性不妊」最前線
夜バナFLASH編集部
記事投稿日:2018.04.29 16:00 最終更新日:2018.04.29 16:00
クリニックの一角に「メンズ・ルーム」と名札のかかった小部屋があった。ここは採精室、つまり精子を採取する部屋だ。
JR千葉駅前の高橋ウイメンズクリニック(高橋敬一院長)は、千葉県最大級の不妊治療専門医院だ。ふだんは産婦人科を受診する女性患者がほとんどだが、火曜日の午後と土曜日の午前は、千葉大学医学部附属病院泌尿器科の市川智彦教授が男性不妊の診察・治療にあたっている。
「不妊治療というと女性の問題と思われるかもしれませんが、じつは不妊症カップルの50%程度は男性側に原因があるとされているんです。私自身、これまで約2000人以上の男性不妊症患者を診察・治療してきた実績があります」
診察では勃起や射精の状態、性生活の状況などを確認し、精巣(睾丸)のサイズの測定などを触診でもおこなう。
「精巣の大きさは不妊と因果関係があるので必ず測定します。男性不妊症の最大の原因といわれる精索静脈瘤(睾丸上部の静脈の異常肥大)の有無も触診でわかります。ペニスのサイズは、不妊とはほとんど関係ありません」
検査では、超音波検査で精巣内の異常を診断したり、血液検査で男性ホルモン異常を測定したりするが、重要なのが精液検査だ。精液検査は冒頭に紹介した「メンズ・ルーム」でおこなう。検査によって精子の健康状態がわかる。
ちなみに、WHOの基準では、精液量1.5ミリリットル以上、1ミリリットルあたりの精子濃度1500万以上、総運動率40%以上などが正常値とされている。
「精液の性状は、日に日に変動するため、悪い結果が出た場合でも、再度検査をして、問題なしとされることがあります。
男性不妊の原因としては、勃起不全(ED)、膣の中に射精できない射精障害、精子の数や運動量が低い軽度の精液性状低下などもありますが、無精子症の患者も、5人に1人くらいいます。
ただ、これは不妊治療に来院された人のデータで、一般の人も入れれば無精子症は100人に1人ぐらいの感覚です」
無精子症とは精液中に精子がまったくいない症状をいう。なかでも、精巣内で精子が作られているのに精液中には精子が見られないのが閉塞性無精子症だ。
「精子は作られているのに、精子の通り道である精管が塞がっていたり、精巣上体(副睾丸)が炎症を起こしたために閉塞しているのが原因です。パイプカットは精管を意図的にカットするものですが、精液は出ても精子は出てこなくなる。これと同じ原理です」
子供のころに鼠径ヘルニア(脱腸)手術をした影響で精管が塞がっているケースも多かった。
「じつは、私自身も鼠径ヘルニア手術の影響で無精子症だったんです。こうした閉塞性の場合は、閉塞した部分をつなぎ合わせる手術をします」
精子が作られている限り、無精子症でも妊娠は十分に可能となった。精巣内の精子を回収して顕微鏡下で顕微授精をおこなえばいいのだ。
「生殖医療の技術の進歩で男性不妊症も救われる時代になってきました」
(週刊FLASH 2018年4月10日号)