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訪問者50万人!フランスで開催された「おちんちんエキスポ」の中身
夜バナFLASH編集部
記事投稿日:2018.08.26 11:00 最終更新日:2018.08.26 11:00
2007年、パリの科学産業博物館で「おちんちんエキスポ」が開催された。9歳から14歳を対象にした性に関する博覧会で、教育省サイト内でも学校が引率していくのに適したものとして推薦されている。
子どもたちに人気があるマンガの主人公ティトフが、性にかんして説明するという構成になっている。
ティトフは8歳から12歳くらい、いまいち不器用でモテないがセックスには興味津々。女の子に対して果敢にアタックするが、みんなにフラれまくるキャラクターで、800平方メートルに及ぶエキスポ内で主人公を演じる。
女の子の視点は、その彼女、ナディアの言葉で説明される。説明はすべて可愛いイラストで、子どもたちにショックを与えないためにという気遣いから、リアルな写真はゼロだ。
2007年にパリで大成功を収めた後、7年にわたってEU諸国を巡回し、50万人が訪れた。
その後2014年秋にパリにもどってきたが、今回は、前年の法案可決後、同年春に合法化された同性婚も考慮に入れた、LGBTに関する説明もある「改訂版」になっていた。
会場はどちらかというと、ごちゃごちゃした小ぶりの遊園地のイメージに近い。「恋するってどんな感じ?」「思春期ってなに?」「セックスするってどういうこと?」「どうやって赤ちゃんができるの?」「ペドフィリー(小児愛)をやっつけろ」という5つのセクションに分かれていて、ゲームや映画、イラストを通して子どもたちが遊び感覚で学べるようになっている。
「大人は立ち入り禁止」のコーナーもあり、その前では、親たちが手持ち無沙汰に待っている。私はプレスカードを持っていたので、中に入ってみた。
すると、思春期特有の質問に対する答えが出てくる短いフィルムが流れている。「マスターベーションってなに?」「ホモセクシャリティってなに?」「ぼくのおちんちんは小さすぎる?」「お風呂に入っているときに、パパとママンに入ってきてほしくないんだけど、なんて言えばいい?」「ポルノグラフィーってなに?」といったテーマで、率直、簡潔に説明されている。
次は「セックスする」のテーマだ。イラストで体位が描かれているが、「相手を撫でてあげたり、そっと抱きしめることも、優しく話しかけることもセックス。だけど、必ず相手との合意の上で」というソフトな説明だ。
「でも、愛していればすぐに気持ちよくなるという簡単なものではなく、パートナーと一緒に少しずつ試して建設していくもの」というポジティブなコメントもついている。
「性病にかかることもあるからコンドームは絶対必要」という説明があるパネルの横には「バンザイ! コンドーム」というゲーム機がある。ボタンを押したり、ペダルを踏んで色とりどりのコンドームをふくらませるというもので、おじいちゃんと孫が一緒に遊んでいるのを見ていたら、気を利かせたのか「マダム、どうぞ」と言われ困惑する。
9歳からということになっているが、お兄ちゃんやお姉ちゃんにくっついてきた4、5歳の子どもたちも走り回っており、とくにショックを受けた様子もない。
私は会場の職員に「8歳以下の子も入っているけどいいの?」と聞いたのだが、「大丈夫。アドバイザーの幼児精神科医によれば、小さい子は自分が興味をもたないものは見ないそうよ」と、自信たっぷりに返された。
私が「おちんちんエキスポ」に行ったのはバカンスシーズンだったのだが、おじいちゃんやおばあちゃんと、あるいは家族ぐるみで来ている子どもたちが多く驚かされた。フランスの家庭において、性について話すのはここまで普通のことなのだろうか?
なかには「クリスマスにコンドームの大箱をパパにもらった!」というような子もいれば、私の友人マリーンのように、高校生の息子に「彼女、セックスしても感じてないみたいなんだけど、どうすればいいの?」と質問されて、親子で話し合ったというケースもある。
しかし、あくまでこういうケースは例外だと思う。
日本でもフランスでも、家庭でどのようにセックスについて話すかは、親なら誰でも頭を抱える問題だろう。だからこそ、話す糸口を見つけるために「おちんちんエキスポ」に3世代そろって訪れる家庭もあるのだと憶測する。
雑誌「セクシャリテ・ユメン(Sexualités HUMAINES)」2014年21号での31歳から40歳の保護者を対象にした調査によると、72パーセントの親たちが性について子どもとスムーズに話すことができると答えている。
しかし、そのうち46パーセントは「もし、子どものほうから聞いてくるなら」という条件付きだ。また、76パーセントの親は、自分自身の親と性について話し合った経験はないと答えている。
ということは、現代の親たちは、自分たちの親とはできなかった話をする、ある意味でのパイオニアなのかもしれない。
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以上、『フランス人の性 なぜ「#MeToo」への反対が起きたのか』(光文社新書)を元に再構成しました。「性」に大らかな国・フランスの現在を、在仏ジャーナリストが多角的に描きます。
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