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倉田真由美が語る「万葉集」いつの時代も女はイケメンが好き
夜バナFLASH編集部
記事投稿日:2019.06.03 20:00 最終更新日:2022.02.14 16:45
新元号「令和」の典拠になった『万葉集』が、密かにブームになっている。じつはこの和歌集、古文の授業が苦手だったアナタも驚きの、性描写が満載だった。万葉集を愛してやまない、漫画家の倉田真由美氏と作家の片山恭一氏が、その魅力を語ってくれた。
倉田氏のお気に入りは次の一首だ。
《うまし物 いづくも飽かじを 坂門らが 角のふくれに しぐひあひにけむ》(巻十六・3821児部女王)
「大意としては、『素敵なイケメンは飽きることがないのに、坂門氏の娘は、身分卑しくデブでブサイクな男と一夜をともにしたのだろう』。下世話ですけれど、いまも変わらない女性の気持ちが表われていると思っていました。
それで、10年ほど前、NHKの『日めくり万葉集』という番組でも紹介したんですが、今回、あらためてネットで調べてみたら……。『角のふくれ』って、立派な男性器、女性用性具を意味するらしいんです(笑)。
それが正しいかどうかはわかりませんが、そんな倒錯的な解釈だってできることは、素晴らしいと思う。
それに浮気をしてしまったり、それを非難してみたり、大昔も同じ。千何百年たっても、意外と女性は変わっていないんだと感慨深いものがあります」
一方、321万部のベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』で知られる片山氏が文学を目指した原点は、高校時代に『万葉集』にふれたことにあったという。
「性愛観や死生観は、1000年や2000年で心の深層の部分では変わるものではないと思うんです。大切な人の死を悲しみ悼む心情は、万葉の時代も現代も、それほど変わりません。
あるいは『魂』のように、生死を超えたものを信じたいという心情も、このAIの時代にも息づいていますからね。
自分自身、小説を書きだしてから、『自分の作品には、死の問題がいつも出てくるな』と気がついた。最初は無意識でしたが、いまから考えると『万葉集』などで培われた、人の死に対する感受性みたいなものが、影響していたのかもしれません」
イラスト・鈴木淳子
(週刊FLASH 2019年5月28日号)