夜バナ
55歳300人切りオヤジ、キャバクラで女の子を落とせるか(3)
夜バナFLASH編集部
記事投稿日:2016.05.14 20:00 最終更新日:2016.10.12 13:10
えりこちゃん、あやこさんの2人と話をして店の雰囲気がわかってきた。あやこさんが席を離れて最後の3人目は少し時間がかかっている。もうそろそろ5分くらいたっている。
混んできたのでうまく回っていないのかと思っていると、「みなきさん3番テーブルへ」という声が聞こえてきた。キャバクラによっては女の子をちゃん付けで呼ぶ店もあるが、さん付けのほうが、高級感があっていい。
「みなきです。よろしくおねがいします」
控えボックスの右にいたキレイ系の人だ。これはいい。通常この手の美人は指名が入っていてなかなか指名なしでは来てくれない。ラッキーだ。
「横に座っていいですか?」
すぐさま、このキレイ系に対し、どういう自分を演じるかを考えた。オヤジという風貌で、もちろんかっこよさはない、服のセンスもない、低音ボイスもない。つまりこの美人に対して自分の売りがない。
SEという仕事だけにスマホ、PCには詳しいし、テニスは得意分野。であっても、この美人に対して通用するものではないだろう。変に見栄をはっても見破られるのが落ち。
しかたなくここは一か八かギャップ療法でやってみよう。お茶目系のダメおやじだ。とりあえずの会話はベタでいく。
「みなきさんって可愛い名前ですね」
「ドレスよく似合っていますね」
「キレイですね」
「彼氏はいるの?」と続けた。
彼女にとってはみんなに言われるありきたりなことで面倒くさいだろうに、ちゃんと答えてくれる。「彼氏はいませんよ」との返事に、「え~うそでしょ。選びすぎじゃないの?」と、ウソであろう会話も楽しんだ。それくらいでいい。
ここまでの流れで、彼女の中に、どこにでもいる普通のベタなおじさんというイメージが付いたはずだ。これで見栄を張る必要はなくなった。彼女に何を言っても、彼女が受け止めてくれる態勢はできているはずだ。
「若く言えるけどいくつ?」
「21歳です」
「もしかして学生?」
「そうです」
少し踏み込んだ会話に進めた。ためらいなく返事してくれている。もう少し踏み込む。
「彼氏いなくてもさみしくない?」
「女の子同士でも楽しいですからさみしくないですよ」
「女子会ってやつだね」
「そうです」
「この間テレビでやってたけど、エッチなくても平気な人タイプ?」
「なにそれー」
お~返事した。ここで黙ると会話は路線変更だが、まだいける。
「最近は男も女もエッチなくてもいい人が多いらしいよ。彼女より、自分の趣味を楽しみたい人が増えてるらしい」
「へ~」
「彼氏いないって言ってたけど、みなきさんはどれくらいしてないの?」
――沈黙。
もうこのへんにしておこう。
「最近仕事が忙しくてストレスだらけ。今日みなきさんと話できてスキッとしたよ」
「ちょっとエッチなオヤジだったけど」
「仕事なにやっているんですか?」
おっと、ちゃんと仕事の話に展開してくれた。予定どおり。
これまで【ベタなオヤジ→エッチなオヤジ】まで来ているので、これからは【意外な仕事→意外な趣味→意外にスマホがくわしい】というイメージアップに展開する。
秀でる売りものがない以上、意外性で気を引くしかない。
だが、ここで店員が来た。早い。
「まもなくお時間ですがご延長は?」
少し考えた。通常は1日目では絶対にしないが、今日は別だ。これまでの設定が無駄になる。
「ハーフで延長おねがいします」
「30分ですね」
「はい、それと指名お願いします」
僕は、さっそく指名を入れた。
<著者プロフィール>
山本吾郎 1960年、名古屋市生まれ。大学を卒業後、SEとして活躍。業務先の化粧品会社で、女性に囲まれる楽しい毎日を送る。昼間は女性だらけでムラムラしたが、社内での女性トラブルはうわさが早く、その気持ちのはけ口をキャバクラに向けた。現在は、老後の生活費をためるため、多くの若者にキャバ嬢攻略法を伝授している。