夜バナ
55歳300人切りオヤジ、キャバクラで女の子を落とせるか(6)
夜バナFLASH編集部
記事投稿日:2016.06.04 21:25 最終更新日:2016.10.12 13:10
キャバクラ2日め。今日2人目の女の子がやってきた。
「はじめましてユリヤです」
「かわいいですね」といきなり褒めの挨拶をした。外見はとてもかわいい。そこにちょっと天然が入っているからそれがまた魅力的で、思わず挨拶が「かわいい」になってしまった。
心地いい笑顔だが、ちょっと気持ち的に押された感じがある。それにしてもキャバ嬢の名前は「ユリヤ」だの「みなき」だの、ありそうで本当にはなさそうな微妙な名前が多い。一人に絞ればいいのだろうが、八方美人でいくには覚えにくくてしょうがない。
「ユリヤちゃんは何年ぐらいやっているの」
「半年です」
「へ~」
「本職は何?」
「ここが本職です」
「前は?」
「居酒屋で働いていました」
「なんで辞めたの?」
「……」
あ~いかん。最初からプライベートなことを聞きすぎた。これじゃ警察か学校の先生だ。今日は集中力がない。疲れたか、それとも慣れがそうさせているのか。会話に丁寧さがない。
気を許しすぎだ。会話を変えよう。
「ここのキャバクラはカラオケがないのがさみしいね」
「カラオケ好きなんですか」
「好きだよ」
「ユリヤは聞くほうが好きです」
ああ、しゃべりもかわいいぞ。
「そっか。でもユリヤさんはかわいいから人気あるだろうね。指名、多いでしょう?」
「そんなことはないけど、いいお客さんにめぐまれて今3番です」
「へ~スゴイ」
「でも、もう少しで2番になれそうなんです」
「おお!」
嫌な予感がする。
「お客さんのお名前聞いていいですか」
「山本吾郎で山さんと呼ばれています。カラオケ好きなんでカラオケの山さんです」
「山さん1杯もらっていですか」
ああ、ペースに乗っている。いいテンポで言ってくるなあ。たぶん次は指名だ。
「この店はじめてですか?」
「いや、先週一度来ました」
ああカモに思われている。ユリアは自分のお客にしようとたたみ掛けているような威圧感を感じる。けど、かわいい。それに嫌気を感じさせない。術中にはまるとはこのことか。完全に負けている。やばい。この女の子を口説き落とすこことは無理だ。勝てる気がしない。
「指名を入れてもらえるとうれしいなあ」
ああ~、来た。指名をするということは今後の選択枝を減らすことにつながる。1つの店で複数人に指名することはもめる元である。指名はなるべく1人、日を変えたりして最高でも3人、うわさにならないうちに短期間で1人に絞るのが鉄則だ。
口説けない相手に対してむやみに指名を増やすのは目的達成の足かせになる。負けるな。指名なしだ。ここはひとつ駆け引きに持ち込む。
「指名してもいいけど、ひとつ提案があるんだ。実はユリアちゃんがとてもタイプなんだよ。いま指名料2000円払って指名してもいいけど……今後ユリアちゃんが順位争いで、どうしても得点をあげたいと思ったとき、指名やボトル入れなどで5万円までなら協力する。どちらを選ぶ?」
「ホント?」
「ユリアちゃんとは同じ目標に向かうというお付き合いをしたい。他の子とはこんな約束はしない」
こう説得したら、いま指名しなくてもいいよ、と言ってくれた。念のため、補強しておこう。
「男の気まぐれなお遊びだと思って信じてよ。それにたとえうそでも、ユリアちゃんの損は2000円、信じて実行されたら5万円、賭けてみる価値はあると思うよ」
「わかった――」
駆け引き成功。これでユリアは、これから得点を気にするたびにこの約束と俺を思い出す。ユリアの心にずっとただで居座る代金が5万円だ。言葉の駆け引きでは勝てないが、お金をネタにユリアの心の中に、次の出会いの種を植える。
もちろん、メールがあったときには、10万円までの協力はする覚悟をもっている。金銭的には同伴5日分。実際にメールが来たときには5万円では足りないくらいの勢いで言い寄るのは女の子にはよくあること。最初から目一杯の数値は出さないのは戦略だ。その5万円を超える金額の交渉時に、勝負をかけるのだ。
「じゃラインを交換しよう」
交換が終わったところで、「ユリアさん」という店員の声が聞こえた。3人目の子は、こういうタイプは勘弁してほしい。お願い神様。(続く)
<著者プロフィール>
山本吾郎 1960年、名古屋市生まれ。大学を卒業後、SEとして活躍。業務先の化粧品会社で、女性に囲まれる楽しい毎日を送る。昼間は女性だらけでムラムラしたが、社内での女性トラブルはうわさが早く、その気持ちのはけ口をキャバクラに向けた。現在は、老後の生活費をためるため、多くの若者にキャバ嬢攻略法を伝授している。