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【数字は踊る】北陸新幹線に乗ったら背広を買おう

連載FLASH編集部
記事投稿日:2016.08.09 20:00 最終更新日:2016.08.09 20:00

【数字は踊る】北陸新幹線に乗ったら背広を買おう

写真:伊藤 真吾/アフロ

 

●なぜスーツを背広と呼ぶのか

 

 今回のテーマはビジネスマンには欠かせない「背広」。ところで読者諸兄は「背広」の語源をご存じだろうか?

 

 背広は幕末から明治の初めにかけて、日本に入ってきたといわれる。そもそも英国で上下同一の生地でできたスーツが誕生したのは、日本の幕末期にあたる1860年代のこと。それが日本で背広と名づけられたのだ。

 

 言葉の由来については諸説ある。有名なのは背広を売り出したロンドンの紳士服仕立街、サビル・ロー(SavileRow)がセビロとなまり、背が広くできていることから漢字の「背広」をあてたというものだ。

 

 ほかにも市民階級の服(civilcloth)のシビルがなまった、などの説がある。

 

 日本にも背広の文化は徐々に浸透する。

 

 1871(明治4)年に欧米視察に発った「岩倉使節団」が、最初の訪問地である米国で撮った記念写真がある。

 

 椅子に座る羽織袴姿に髷を結った岩倉具視を中心に、左右には木戸孝允と大久保利通が、現地で作ったダブルの背広を着て椅子に腰掛けている。後ろにはシングルの背広に蝶ネクタイ姿の伊藤博文と山口尚芳が立つ。

 

 カメラ目線の木戸孝允はネクタイを締めているし、山高帽を持っていることを除けば現代のサラリーマンとまったく変わらない。

 

 背広が普及する原点をこの写真に見ることができる。その後、明治政府は洋装化政策を推進し、大正時代には背広が勤め人の仕事着として広く着られるようになるのである。

 

左から木戸孝允、山口尚芳、正使岩倉具視、伊藤博文、大久保利通

左から木戸孝允、山口尚芳、正使岩倉具視、伊藤博文、大久保利通

 

●東京は2万円、金沢は1万円

 

 さて、世は平成。総務省の小売価格統計調査には、15万 人以上の都市の「背広服」の価格が記載されている。デパー トを除く普通品の夏物の価格を調べると、東京都区部の 2013年の平均価格(3月~8月)は1万9146円だったが、 2014年は2万1894円と2748円上昇している。

 

 価格が上がっているのはどこの都市も同様だ。

 

 ところで、統計表を見て驚くのは都市によっての価格の差が激しいこと。商品が異なるのでばらつきがあるのは当然だが、それにしても違いすぎる。

 

 たとえば全国一安い金沢市は2013年の平均価格が9833円、2014年は1万749円だった。東京都区部と比べると両年とも約半額だ。

 

 なぜ金沢が安いのか? 金沢市役所や地元の大型紳士服店などでも首をひねるばかりだ。

 

 総務省に取材してみると「地元住民の目線で店を何軒か選び、地元の調査員が調べている。1店舗だけの価格ではなく、短期間のセール品などは除外している。平均して金沢市が安かった」とのこと。

 

 開通して話題になっている北陸新幹線の運賃は、東京ー金沢間を普通席往復で約2万8000円。

 

 この夏、3着以上背広のまとめ買いを考えている在京読者諸兄がいれば、ぜひ金沢へ。観光がてらの買い物で、交通費ぶん元が取れてしまう!

(週刊FLASH 2015年6月16日号)

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