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『ドクターX』にも登場「腹腔鏡手術」が抱えるマイナスポイント連載 投稿日:2016.11.07 12:00

 

「腹腔鏡手術って、体にやさしくないですよね」

 

 疲れ果てた研修医のA君が呟いた。彼が担当したのは胃ガンの腹腔鏡下胃全摘術。従来の開腹手術なら約4時間だが、今回は8時間以上かかったのだ。

 

 出血量も多かったが、「患者は腹腔鏡手術を希望している」と外科医は腹腔鏡操作を続行、長時間手術となったらしい。

 

 腹腔鏡手術が日本中に広く知られるようになったのは、2006年の王貞治氏の胃ガン手術だろう。「傷が小さく、体にやさしい」との触れ込みで手術を担当した医大が大々的な記者会見をおこない脚光を浴びた。

 

 そして、「腹腔鏡手術ができる」=「ハイレベルな病院」という雰囲気となり各病院が競って導入、手術件数などの成果を競うようになった。

 

『ドクターX』シーズン1の第一話でも腹腔鏡出術が登場する。開腹手術を決定した院長に主人公が異議を唱え、腹腔鏡手術に変更し成功させるのだ。

 

 事態が変わるのは2014年、「群馬大病院で腹腔鏡手術の肝臓切除で死亡例多発」の報道があってからだ。同年には女優・川島なお美さんの「腹腔鏡下で胆管ガン手術」が公表されたが、翌年に亡くなり、治療法の是非が議論された。

 

 群馬大の事件はその後、同一外科医による死亡例が追加報告され、今年7月の事故調の報告書を受けて担当医は懲戒解雇処分となった。腹腔鏡手術のイメージはこうして大幅にダウンした。

 

 そういえば、王氏も手術後に激やせしたり、3年後に腸閉塞と胆石で開腹手術になるなど、じつはあまり順調な術後経過ではなかった。

 

 基本的に腹腔鏡手術は、良性疾患(ガンでない腫瘍、胆石など)や、ごく初期のガンが対象である。王氏のような直径5センチのガンに対しての腹腔鏡手術は、当時の水準としてはやりすぎだったといえる。

 

「傷が小さい」「術後の回復が早い」という長所のみが強調されがちだが、現実には「手術における視野が狭くなる」「全身麻酔が必須」「大量の二酸化炭素を使用する」「長時間になりやすい(川島なお美さんの場合は12時間かかった)」といった短所もある。

 

 また、外科治療における優先度は、

 

「病巣をきちんと切除し修復」〉「傷が小さい」

 

 が大原則である。よって、手術中にトラブルが発生した場合には、腹腔鏡に固執せず、直ちに開腹手術に移行する柔軟性と決断力が必須となる。

 

 ゆえに、腹腔鏡手術を受ける決断をした場合には、主治医との面談では「病気が治れば傷は大きくてもかまいません。腹腔鏡にはこだわりませんので、何かあれば遠慮なく開腹してください」などと、患者側からもダメ押ししておくことをおすすめする。

 

 冒頭のシーンに戻る。

 

「群馬大事件と川島なお美さんで腹腔鏡バブルは終わったから。これからは本当に必要な症例を選んで、腹腔鏡手術をおこなう時代が来る……と、いいんだけどね。お疲れさま」

 

 疲労困憊のA君に私が言えるのはこれだけだった。

 

筒井冨美 Fumi Tsutsui 1966年生まれ フリーランス麻酔科医 国立医大卒業後、米国留学、医大講師を経て2007年からフリーに。医療ドラマの制作にも関わり、『ドクターX』取材協力、『医師たちの恋愛事情』(フジテレビ系)医療アドバイザーを務める

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