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ドクターX「大学病院の手術場には札束が転がっている」の真贋

連載 投稿日:2016.11.21 20:00FLASH編集部

ドクターX「大学病院の手術場には札束が転がっている」の真贋

 

「母がA医大のB先生に手術してもらうことになったんですが、謝礼はウイスキー詰め合わせでいいですかね?」

 

 と知人からの相談あり。

 

「うーん、酒好きとは限らないし」「やっぱり現金ですかね……」と、お悩み中。

 

 確かに『ドクターX』の加地先生(勝村政信)も「大学病院の手術場には札束が転がっている」と言っているし、放送中のシリーズ4・第2話にも「底に万札を敷いた饅頭箱」が登場した。

 

 やはり、大学病院で手術を受ける前には謝礼を準備すべきなのか?

 

 個人的な見解だが、中途半端(数千円レベル)な品物なら、むしろお礼状のほうがいい。お酒やお菓子は好みもあるので、シンプルなハガキで十分だ。賞味期限もなく、さりげなく同僚に「患者に慕われる医師」をアピールできるというメリットもある。

 

 複数の医師に送るときは、ハガキを連名にするのではなく、面倒でもそれぞれの医師に出すべき。

 

 大学病院の医師(特に研修医)は部門移動が激しく、連名だと転送に困るのだ。長い文章が苦手ならば、年賀状のついでに「お陰様で、元気になりました」等、書き添えて送っておけば十分である。

 

 原則的には「謝礼は不要」と考えてよい。謝礼の有無が治療に影響することはないが、「謝礼ゼロではちゃんと手術してもらえるか心配」という人もいるだろう。

 

 ならば、入院時に「研究などで協力できるならば、させてください」と申し出るとポイントが高い。

 

 大学病院には、治験(臨床試験)という、新薬のデータを集める仕事がある。研究といっても、実際の患者に投与される前には、健康人ボランティアに投与されて問題なかった物ばかりで、海外ですでに販売されている薬も多い。

 

 医療ドラマのような派手な副作用の確率は、乗った飛行機が墜落するレベルである(=限りなくゼロに近い)。

 

 STAP騒動などで、最近の研究不正に対する社会の目は厳しい。協力してもらえる患者が見つからなくて、大学病院はどこも困っているのだ。

 

 というわけで、治験中の患者は、大学病院の医師にとって大切な存在となり、まめに診てもらえるので、おすすめなのだ。

 

 では、もしあなたに経済的な余裕があり、「どうしてもお金でお礼をしたい」場合はどうするか。

 

「封筒に現金か商品券を入れて、さっと渡す」というのも、それはそれでアリである。一度は返されることもあるが、「研究費にお使いください」と言うと、受け取ってもらえることが多い。

 

 饅頭箱はデカいし目立つので「お茶です」と言いつつ小さな紙袋を渡し、袋の中には「お茶と封筒」というのもスマートである。最近では「Amazonギフトカード」が人気だ。

 

 ただし、「絶対に受け取らない」主義の医師も存在するので、本気で固辞しているような場合は、引っ込めるべきだろう。

 

「執刀医だけでなく、研修医にも感謝したい」など複数の医師にお礼をしたい場合は、「ひとつの封筒に5万円」よりも「5つの封筒に一万円ずつ」がベター。執刀医に5つの封筒を渡しながら「研修医の先生方にもよろしくお願いします」などと口添えすると、適当に配分してくれる(はずである)。

 

<筒井冨美 Fumi Tsutsui>
 1966年生まれ フリーランス麻酔科医 国立医大卒業後、米国留学、医大講師を経て2007年からフリーに。医療ドラマの制作にも関わり、『ドクターX』(テレビ朝日系)取材協力、『医師たちの恋愛事情』医療アドバイザーを務める

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