連続殺人犯は、たいていの場合、幼いころに虐待をうけているため、家庭環境について聞いてみた。
――ご両親はどんな方でしたか?
「両親は、私が自分で自立できないよう、わざと育ててきたんです。このことは2人の医師も確認しています」
――というと?
「私の友達とかを巻き込んで、幸せになるのはいけないことだと私に信じ込ませてきたんです。だから、私は自分で人格を形成できなかった。特に父親はいつも私に対し見下したような態度で接してきた」
私はちょっと意外に思った。手紙には、
《やはりどこかに親を喜ばせるため、よい成績を取らなければならないという無理があったのだと思います》
などと書いてあったからだ。だが、実際には9歳で親のタバコを盗んで以来、酒からマリファナ、LSDへと薬物中毒の道を歩んだ。
マリンの親への抗議はさらに熱を帯び始めた。
「父親も母親も、私の友人を利用して、私の健全な成長を邪魔してきたわけで……つまり、私は完全な犠牲者なのです。それで妄想性統合失調を発病し、殺人を犯すことになったんです。
でも、いまや私は完全に回復し、しっかりとした自我を確立しています。自分でもハッキリとわかります。
なのに仮釈放の委員たちときたら、私との面接で、いつも意図的にマイナスなことばかり答えさせる。いまだに精神的な病を抱えていると結論づけるためにです」
私は話を遮って、再び「犯行当時のことを思い出すことがあるか?」と聞いた。するとマリンは、やはり深い反省の言葉を口にする。
「あの瞬間の具体的なことは思い出せません。本当に心が苦しくなってしまいます。ただ、ある調査では、アメリカ人の85%が来世の存在を信じているといいます。私は毎日、神の祝福によって彼らが幸せな来世を送れるよう、祈りを続けています」
そして、マリンはこう続けるのだ。
「でも、私はもう完治しているんだから、十分釈放に値するんです。実際に逮捕されるべきは、私の両親と友人たちです。だって、私がいつどこで犯行を犯すか事前に知っていながら、止めようともせず、警察に通報すらしなかったんだから。どう考えても、私は、被害者ですよね?」
マリンはとても冷静な口調で、自分がいかに早く仮釈放されるべきかを、繰り返し繰り返し語った――。
(2016年3月12日訪問)