自分が初めて買いものをしたのが何歳のときだったのか、まったく覚えていないが、いわゆる「小銭を握りしめて」駄菓子を買ったのが最初だと思う。
5円や10円の、ガムのようなものやジュースのようなものを買った。今よりもっとケミカルだった甘さがぼんやりとなつかしい。
それからおおよそ50年、いろいろなものを買ってきた。今も買いつづけている。
よく飽きないな、と思う。
その年、その年の買ったものの記録があったら、今読んでどんなに楽しいだろうか。たとえば1972年には確実にカルビーの「仮面ライダースナック」を買っているが(全国的に大流行したのです)、それ以外のこまかい買いものは完全に忘れてしまっている。
そんなわけで、21世紀の今、中高年となった男の買いものの記録を書きとめていきたい。
さすがに子供のころとはちがう「五十にして天命を知る」といわれる年代にふさわしい買いものをしているのではないか?
……と思ったがぜんぜんそういうことはなく、先日はスーパーで『ウルトラマンオーブ※』の食玩を買った。ゾフィーと「ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター」のソフビが同梱されたもので、そのサンダーブレスターが好きなので買ったのである。税込み378円。三つ子の魂百まで。
サンダーブレスターは、悪のウルトラマン「ベリアル」の能力を持っていて、ちょいワルな見た目と荒々しいアクションがカッコいいのだった。
買ったフィギュアをどうするかというと、飾るのだ。さすがに手に持って飛ばしたり戦わせて遊んだりはしない。
あ、いや、することもないではないが、めったにやらない。
ちょっと前なら娘とレゴで遊ぶときに参加させたりした。たとえば今も『キョウリュウジャー』の食玩フィギュアが、レゴ世界の住人としてレゴ入れに入っている。
だが、娘ももう小学2年生。レゴもあまりひっぱり出さないし、特撮ヒーローにもほとんど興味はないようだ。
だから、仕事部屋に飾る。
飾っているおもちゃは妻子の目にも入るわけだが(いや、まったく入っていないのかもしれないが)、完全にスルーされる。
机の片すみに立たせ、何カ月かして、飽きたらしまう。
しまわれたソフビ群は、押し入れの片すみで怪獣墓場みたいになっている。ヒーローも怪獣もごっちゃになった、それなりに厳選された怪獣墓場。食玩に付属してきた、申しわけ程度のガム一個はどうするか。
仮面ライダースナックのころは、ライダーカード目当てでスナック本体を捨てる子が続出し、社会問題になったりしたのだが、私はちゃんと食べていた。
あ、一度だけ、くだいて水で練って魚釣りのエサにしてみたことがある。ぜんぜん釣れなかったので、やっぱり自分で食べることにした。
今回ももちろん釣りエサにしたりはせず、ちゃんと噛みました。
※『ウルトラマンオーブ』は、2016年に放送された、現時点でのウルトラシリーズ最新作。「スペシウムゼペリオン」「サンダーブレスター」など、歴代ウルトラマンの力を借りた、さまざまなフォームチェンジを駆使して戦う。
よしだせんしゃ マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 1989
年に連載開始の『伝染るんです。』が国民的大ヒット。『火星田マチ子』『ぷりぷり県』など著作多数。2015年、第19回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。近刊に『おかゆネコ7』『まんが親5』(ともに小学館)、絵本『走れ!みかんのかわ』(河出書房新社)。妻のマンガ家・伊藤理佐さんと小学2年生の娘を育て中
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載しています
(週刊FLASH 2017年5月23日号)