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吉田戦車「フランス製のキャットフード」値段の高さに目が点
連載FLASH編集部
記事投稿日:2017.05.24 11:00 最終更新日:2017.05.24 11:00
ネコを飼っているので、ネコのエサを買わなければならない。
キャットフードというものが売られていなかった時代は、ダシがらの煮干しやけずり節、魚のおかずの骨や頭に残り飯をまぜた、いわゆる猫まんまをてきとうに与えていたのだと思う。実家では飼っていなかったので、くわしく知らないのだが。
当時の、冷凍フィッシュフライのCMソングを妙におぼえている。
「骨がないから~、ネコ~、がっかり」
小骨をいやがって魚を食べない子がいるから、骨なし魚フライが開発されたのだな……ということを子供心に思った。
それほどまでに、サカナ系の残飯は、普通にネコのエサだった。
今は「人間と同じものを食べさせるのはよくないので、低塩分で総合的な栄養が含まれたペットフードをあげましょう」という世の中になった。
2015年、保護された子ネコの里親になることになり、ひきとりにいった動物病院で「これをあげてました」ともらったキャットフードは、フランスのメーカーの高級品だった。
フランス!
おいおい、ノラの子ネコに、なにもフランス製のエサをあげなくても……とちょっと思った。昭和を引きずっている人間なので、ついそんなふうに思ってしまう。
しかしまあ、おとろえていた幼い体を元気にするため、病院でも最善の対応をしたということだろう。料金は保護して病院にあずけた人が負担しているのだった。
ネコ飼いの友人宅でもそれを与えていると聞き、しばらくは自転車を飛ばして買いにいっていた。そのへんのスーパーやコンビニでふつうに売っているエサではなかったが、自転車圏内に取り扱い店があった。
ひきとった二匹のうち一匹は、治療法がない難病が発症し、家にきて2カ月でこの世を去ってしまった。
その悲しみも薄れた翌年、もう一匹飼うことになり、そいつも先輩ネコのマツも元気すぎるくらい元気なので、ちょっとエサを見直すことにした。
「やっぱりおフランス、お高いよな……」
と、買うたびに「お」をつけて思っていたからだ。
国産の、もうちょっと買い求めやすいフードが商品棚にはたくさん並んでいるのだし、試してみてもいいだろう。
最初に試した商品はマツの気に入らずあきらめたが、次に試した別メーカーのものはどうやら食べてくれたので、まぜながら徐々に替えていき、定着した。
「室内猫用。毛玉対応。コラーゲン3000mg配合」などと書いてあり、それなりに高級品だ。
定価でざっくりと、キロ1300円がキロ1000円になったかんじで、まだまだ高いといえば高いが、しばらくはこれをあげようと思っている。
フランス製品は、人間用のワインやチーズをたまに買ってますので……と、心の中でフランスに頭をさげることも忘れない。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 1989年に連載開始の『伝染るんです。』が国民的大ヒット。『火星田マチ子』『ぷりぷり県』など著作多数。2015年、第19回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。近刊に『おかゆネコ7』『まんが親5』(ともに小学館)、絵本『走れ!みかんのかわ』(河出書房新社)。妻のマンガ家・伊藤理佐さんと小学2年生の娘を育て中
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載しています
(週刊FLASH 2017年5月30日号)