連載
吉田戦車が悩む「なぜ納豆にはタレ・からし付きばかりなのか」
連載FLASH編集部
記事投稿日:2017.06.28 16:00 最終更新日:2017.07.05 09:26
スーパーやコンビニの納豆売り場をながめて、なにか気づくことはないだろうか。
商品のパッケージをじっくりなめるように見てほしい。ほーら、気づいたはずだ。ほとんどすべての納豆に「タレ・からし付き」の文字があることに!
こまかい違いはあれど、なんらかの味つけ調味料が必ず付属しているのが、今の日本のほとんどの納豆の姿なのだ。
ほぼすべてが「タレ・からし付き」なんだから、もうわざわざ書かなくてもいい、とすら思う。「納豆菌入り」とわざわざうたう納豆が存在しないように。
うちでは食材宅配で毎週納豆を注文していて、それは紙と経木のパッケージのものなのだが、タレ・からしはついていない。むかしはこれがふつうだった。
それを食べきったらスーパーに発泡スチロールパックのやつを買いに行くのだが、付属のからしは使うけど、タレは少々心が痛むが、ほとんど捨てている。
ごめんね捨てて、と思うが、常備の醬油や白だしなどで、味つけは好きにしたい。
同じことを思う人はいるようで、イオンのPB「トップバリュ」に、タレ・からしなしがあるという情報は得ていた。だが、うちの近所に取りあつかい店はない。
そんなある日、ふと西友の納豆コーナーで「たれ・からしは付いておりません」という文字が目にとびこんできた!
「おはよう納豆 納豆名人」という商品。気づかなかった。いつごろから売られていたのだろうか。値段は40グラム×3パックで58円(税込み)。タレ・からし付き納豆は、原材料産地やグラム数など個体差はあるけれど、3パック70円とか80円とか95円とか。
当然のことだが、けっこうしっかり「タレ・からし」に値段がついていた。
後日、ある街のダイエーでトップバリュの「たれ、からしを省いた小粒納豆」にようやく出会うことができ、買ったのだが、40グラム×3パック48円。安くてもうしわけない気すらする(値段はすべて取材時のものです)。
「おはよう納豆」(ヤマダフーズ)のサイトを見ると、「お客様からのご要望により、たれ、からしをなくした納豆です」とあり、やはり少なからぬご要望はあるのである。仲間がいた!
しかも「容器の中で別添小袋が製品(納豆)に被っていないため、発酵がスムーズになり、均一な仕上がりで臭いも抑えられます」というメリットまで書かれてあり、 ほんとかよ、と思うものの、興味深い情報だ。
「タレ・からし」は、21世紀の今、もっとひきしめてもいい部分のように思える。「捨てる調味料にお金を出したくない」という声が大きくなれば、「なし」は今後、少なくとも売り場面積の半分を「付き」と分けあうことになるかもしれないし、ならないかもしれない。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 1989年に連載開始の『伝染るんです。』が国民的大ヒット。『火星田マチ子』『ぷりぷり県』など著作多数。2015年、第19回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。近刊に『おかゆネコ7』『まんが親5』(ともに小学館)、絵本『走れ!みかんのかわ』(河出書房新社)。妻のマンガ家・伊藤理佐さんと小学2年生の娘を育て中
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年7月4日号)