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テントを買って家で寝た「吉田戦車」キャンプは行けず無念
連載FLASH編集部
記事投稿日:2017.07.05 11:00 最終更新日:2017.08.12 20:32
2015年の秋、家族で初めてキャンプに行った時は、バンガローを借りた。
テントを買うかどうか迷ったのだが、そのときは見送った。一人用のテントにあこがれがある。かつて中型二輪に乗っていたころからのあこがれなのだが、買いそびれているうちに中年になり、バイクは卒業した。
この機会に思いきって買って、自分だけ外で寝ようかとも考えたが、そんなことをしたら女性陣から大ブーイングがおきるのは必至であり、あきらめた。
その後、熊本地震の被害など見てやはりいろいろ考え、家族3人で使えるテントを買うことにした。もし大震災がきて家が損壊すれば、庭先か、避難所の学校グラウンドなどで寝泊まりすることもあるかもしれない。買おう。買う。
さすがにホームセンターで衝動買いしたりはせず、一人用テントのことを調べたときに最有力候補だった、モンベルのカタログを吟味する。
キャンプ場には公共の交通機関で行く場合が多いだろう。そう考えれば軽いに越したことはなかったが、軽いテントは高い。超軽量ではないけど、値段も手ごろでベーシックなものに目をつけた。
「ムーンライトテント3型」
税込み3万5000円ぐらい。テントらしい形をした、いいテントである。2~3人用とあり、大人2人と小学生1人のうちにピッタリだ。
とどいた翌日、さっそく8畳間に張ってみた。子どもとネコ大はしゃぎ。張るだけではなんなので、一晩寝てみることにした。かつて屋久島・宮之浦岳に登った時に使った「イスカ」のマットレスを妻に。いつの日か一人テント泊をするときに使おうと思って買ったが、まだ自室での昼寝にしか使っていないマット、「サーマレスト Zライトソル」を娘に。
自分用にはスーパーのアウトドアコーナーで買った615円のテントマットを敷いたが、厚さ5ミリのそれは畳にじかに寝ているのとほとんどかわらず、寝ぐるしかった。厚さ2センチのZライトソル、空気を入れて使用するイスカのマットは快適だったようだ(のちにZライトソルを買い足した)。
寝ぐるしいといえば、小1の寝相の悪さというのを私はあなどっていた。やはりきゅうくつだったらしく、しきりに寝がえりをうち、蹴りや裏拳がガンガンとんできた。
この年、なにかと忙しくてキャンプには行けなかった。買い集めたアウトドアグッズ類が「失敗買いもの」になったらどうしよう。
テントが物置にあればひと安心とは思うものの、テント本来の使い方「外で寝る」ということを一度もしていないわけで、やっちゃったかなー、と思う。あと、娘が高学年とか中高生になったら、確実にこのテントではせまいな、とも思う。
そうだ、その時こそ一人用テントを買い足せばいいのか! でもそれは一瞬で、自分一人の部屋を欲する年ごろの者に奪われる気がする。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 1989年に連載開始の『伝染るんです。』が国民的大ヒット。『火星田マチ子』『ぷりぷり県』など著作多数。2015年、第19回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。近刊に『おかゆネコ7』『まんが親5』(ともに小学館)、絵本『走れ!みかんのかわ』(河出書房新社)。妻のマンガ家・伊藤理佐さんと小学2年生の娘を育て中
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年7月11日号)