連載
吉田戦車が家の周りの雑草取りに買ったもの、その名は「てみ」
連載FLASH編集部
記事投稿日:2017.09.06 16:00 最終更新日:2017.09.06 16:00
いきなり「てみ」といわれても、多くの人はなんのことだかわからないだろう。私もわかりませんでした。漢字だと「手箕」と書く。
「箕」は穀物や豆をふるってモミガラなどをのぞくための、かつては必需品だった農器具である。
今では、竹細工をあつかう店などで民芸品として見ることが多いように思う。
それのプラスチック製品が、今回の買いもの「てみ」だ。2016年の夏の終わり、草とりをなまけていたせいで、雑草がたいへんなことになってしまった。
わが家は古い一軒家で、家のまわりに土部分が多い。ほうっておけば雑草天国だ。
前々回書いた、害虫パトロール&駆除にも支障が出るので、思いきって草とりをすることにした。今まではだいたい妻にまかせっきりだった。
暑かったが長袖シャツを着こみ、完全武装で外に出る。蚊がすごいので、蚊取り線香も2、3か所設置。とりあえずここからここまでと、目標をきめて刈ったりむしったりしはじめる。
イヤイヤやるのではなく、「ここは深い山の中で、自分はキノコや山菜をとって大自然を満喫中!」などと思いこむのがコツだ。あ、今ヤブのむこうのけもの道をイノシシ(バイク)が通った。
刈った草はチリトリに入れて、コンクリート部分に運んでつみあげ、しばらく乾燥させてからゴミ袋に入れる。そのチリトリの容量が、ぜんぜん足りない。
そこで作業を中断して向かったホームセンターで見つけたのが「てみ」だった。農業の現場でも使われているのだろうが、公園や遊歩道などの雑草とり作業時に、オレンジ色のその道具をよく見かける。
これ、「てみ」っていうのか!貼られているラベルには「衝撃、摩耗に強い!」「作物や肥料の運搬に。お庭の掃除などに」と書かれてあり、これじゃん、と思い、 即買いをきめた。
小646円(税込み)と、大862円があって、大はいかにもでかい。大がプロ用で、小が家庭用なんじゃないのかなと思い、小を買った。翌日、妻も草とりに参戦。二人でどんどんむしっていく。
……てみ小、容量ぜんぜん足りず。
「大にすればよかったか……」とつぶやくと、妻が「ほら、また~」というような顔をする。
いや、帽子とサングラスと首から覆うマスクで表情は見えないのだが、そんな気配がした。妻は、大と小があったら迷わず大を買う「大は小を兼ねる」派だ。
大を買い足そうかと思ったが、月に1度刈れば、毎回大量に運ぶこともないのだし、やっぱりまめに刈ろう、ということになった。
2017年の夏は、私はサボっているが妻が少しずつがんばり、てみもしっかり役立っている。
ただ、やっぱり大のほうが作業効率がいいかも……、と思うので、こわれたら買い替えたいのだが、「衝撃、摩耗に強い!」そのボディーは、こわれる気配がまったくないのだった。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年9月12日号)