インスタントラーメンは大好きだったはずなのに、気がつくと消費量が減っている。それは家族と、朝晩いっしょに食事をしているからだ。
朝や晩にインスタントラーメンということはまずなく、食べる機会は昼だけなのだが、そういう生活がつづくと、昼は外食したくなってしまう。
一人暮らし、あるいは自分の仕事場を他に借りているときはそうではなかった。朝からインスタントラーメンという日もあり、消費はそれなりにはかどった。
今は、5袋パックを買うと少々もてあましてしまう。袋ラーメンの賞味期限はそう長くはなく、2袋ほど残ったまま「やべ、期限過ぎちゃった」ということもありがちだ。
だが、やっぱり袋ラーメンが常に2、3袋あるというのは安心できるものだ。カップ麺もいいが、具をいろいろ入れられる袋麺の「いちおうちゃんとした食事にできる感」は得がたい。
そしてその2、3袋は、「塩、味噌、醬油」が1袋ずつあるような状態が望ましい。家族のことはおいといて、あくまで自分一人の安心感を考えた場合だが。
同じようなことを考える仲間と飲むたびに、何度もこの話題が出る。塩、味噌、醬油が1袋ずつ入った3袋パックはできないものだろうか、と。
スーパーで特価200円ぐらいにすれば売れると思うんだけど、なぜないんだ! と、おじさんたちはチューハイをおかわりしたりするのだった。
袋ラーメンを1袋ずつ売っている店も、もちろんある。だが、問題なのは、もちろんお値段のことだ。
今の季節、インスタント冷やし中華を見てみよう。近所のスーパーで1袋89円。5袋パックが特価298円。そんな人はいないだろうが、その1袋89円のを5個買ったら、445円にもなってしまうのだ!
野菜や魚の「一山いくら」がお得なのと同じ理屈なんだろうけど、それでも「一袋」が置いてあるのは、一人暮らしのお年寄りなど「高いけど、同じ味じゃ飽きるし……」という客用なんだろうな。
さらにインスタント袋麺業界に希望をいうと、メーカーの垣根をこえた「有名どころラーメン5袋パック」が見たい。サンヨー食品、日清、マルちゃん、明星ともう一社(地域によってちがったりする)の、たとえば醬油系を集めて5袋! 「戦隊もの」のオールスター映画みたいで燃えませんか!
……無理か。
先日、子供がちょっと食欲が落ちる風邪をひいたので、好物の醬油ラーメンなら食べるだろうと、5袋パックを買ってきた。
1袋作ってやって、「あー、またこの残り4袋の食べ切りに苦労するのか……」と思っていたのだが、気がつくと1週間でぜんぶなくなっていた。私が外出した昼に、妻子で食べたらしい。
なんだ、5袋パック買っても大丈夫な家になっていたのか、と思った。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年9月26日号)