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吉田戦車がハマった「辛くないカレー粉」を探す旅

連載FLASH編集部
記事投稿日:2017.10.25 11:00 最終更新日:2017.10.25 11:00

吉田戦車がハマった「辛くないカレー粉」を探す旅

 

 子供が離乳食を食べはじめたころ、ほしかったのが、完全辛み抜きの「幼児用カレー粉」だ。

 

 大人用のおかずから野菜類をひきあげ、軽くつぶし、小麦粉か米粉でとろみをつけたところに辛くないカレー粉を少量入れ、子供用の一品にできたら。

 

 ずっとそう思っていた。

 

 だがそんな製品は、少なくとも近所のスーパーにはなく、しょうがないのでターメリック、クミン、コリアンダーなどのスパイスを適当にブレンドして、何度か辛くない離乳カレーを作った。

 

 が、しょせんは素人の半端なブレンド。娘は食べてくれたが、大人の私が満足のいく風味ではなかった。

 

 この世にはプロがブレンドしたカレー粉というものがあるのだ。その技術を、幼児に使ってもらうことはできないのか。エスビー食品でいうなら「キッズ赤缶」というようなカレー粉が、あってもいいんじゃないだろうか。

 

 などと考えつつ、子供用カレールウと各種辛くないスパイスを併用して、現在にいたる。

 

 娘はもう、ちょっと辛いぐらいなら食べられる年齢になった。ただ、魚や肉にカレー粉をまぶして焼くなど、料理のバリエーションを増やすために、辛くないカレー粉があればなー、という気持ちはまだある。

 

 たまたまエスビー食品のサイトを見ていたら、辛くないカレー粉の配合を説明しているページがあった。参考にさせてもらったが、こういう製品もあります、と「甘口カレーパウダー」という製品にリンクが。

 

 なんだと!! ボトルの形状はスパイス類と同じ、丸いキャップのシリーズの一つだった。

 

 知らなかった、見落としていたと興奮し、近隣のスーパー30軒ぐらいを探し歩いた。新宿のデパートもまわった。

 

 影もかたちも、なし。

 

 すでに廃版っぽいあつかいのようだったが、ネットショップでは売られている。

 

 15グラム入り税込み286円。送料540円。5個か10個買って、送料がそれくらいなら、ありか……。
(このへんで、正常な判断ができなくなりはじめている)

 

 悩んでいたら、業務用の袋詰め「カレーパウダーマイルド」というのを発見! 100グラム412円。もしかして同じ製品か?

 

 よし! と思い、2袋注文。届いた日、さっそく黄色い昔風のカレーを、ルウを使わずに作ってみた。

 

 味見をすると、辛い。

 

 え…………………………………。

 

 娘は二口めぐらいで辛そうな顔をしたが、水を飲みつつ完食した。原材料には「こしょう」とちゃんと書いてあった。

 

「通常のカレー粉に入ってる赤唐辛子は使ってませんよ」程度のマイルドさのカレー粉だった、のだった。

 

 香りはさすがにすばらしく、少量使う分には重宝しそうだ。「甘口カレーパウダー」の小びんを買って比較する気力は、もうなかった。

 

 辛くないカレー粉を探す旅が終わった気がした。

 

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん

 

※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年10月31日号)

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