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吉田戦車「ダッフルバッグ」を買うも容量の見当を間違える

連載 投稿日:2017.11.29 16:00FLASH編集部

吉田戦車「ダッフルバッグ」を買うも容量の見当を間違える

 

 夏休みに鉄道を利用して海水浴に行ったのだが、どのバッグにすればいいか悩んだ。

 

 1~3泊程度の旅行に使うバッグは三つある。リュックが二つ、ボストンバッグが一つ。一番よく使うのは、グレゴリーの「デイアンドハーフパック」という大きいリュック。容量33リットル。

 

 帰省程度ならまったく問題ない。大きいが、街歩きにも使えるデザインだ。外側にポケットがあると最高なんだけどな。

 

 ただ、今回は海水浴であり、衣類のほかにシュノーケルやマリンブーツや子供のライフジャケットを入れねばならず、妻がスーツケースを一つ使うとはいえ、私ももっと容量が大きいバッグを持つ必要があると感じた。

 

 そこで、今まで所有したことがない「ダッフルバッグ」に目をつけた。

 

 いくつかのメーカーから、50リットルとか70リットルとか、上を見れば100リットル以上の容量のものが出回っている。「多くの遠征隊に愛用され」などと書かれた製品もあり、男心をそそる。伊豆白浜に行くだけだが。

 

 手持ちのボストンバッグも容量が40リットルあり、これでもいいかなと思ったが、荷物をギッシリ詰めこんだとき、ショルダーストラップで片方の肩だけに荷重がかかるのはきつい。リュックのように背負えるタイプのダッフルバッグは魅力的だ。

 

 遠征隊などというものには参加できそうもない非力なオヤジなので、本体が軽いものを探し、グレゴリーの「スタッシュダッフル」45リットルを購入。ネットショップの割引があって8640円。

 

 重量602グラム。軽い。

 

「45リットルって相当入るよ、うん、入る入る。たった2泊3日なんだから」と考えての選択だ。懸命に仕事をかたづけ、出立前夜、妻子と荷造りをする。

 

 ……45リットル、あっという間にぱんぱんに。

 

 妻は当初、私のおニューがあるなら1~2泊用の小さいスーツケース&小リュックでいいかと考えていたようだが、おニューのぱんぱんっぷりを見て、意地悪な顔になった。

 

「残りの荷物、私のほうに入ると思うか」

 

 首を振る私。

 

「ちゃんと『FLASH』に書くように!」

 

 舌打ちしつつうれしそうだ。

 

 けっきょく妻はスーツケースを海外旅行用のでかいやつに変更。海水浴グッズはあっという間に収納され、ぱんぱんのダッフルバッグもいくらかしぼんだ。

 

 おニューの45リットルダッフルの使い勝手はとてもいい。

 

 ポケットは外側に一つしかないのだが、基本、スーツケースと同様に、宿や合宿所やベースキャンプに置いておく、持ち歩かないバッグなので、小分け袋をいくつか使えば整理に問題はない。

 

 いつも街歩きに使っているショルダーバッグも持ったので、サイフやスマホの出し入れはそっちでいいわけだ。

 

 ……だからこそ、その上の65リットル(1000円ぐらいしかちがわない)をチョイスしなかったことを、海水浴場で砂を掘りながら悔やんだ。

 

 遠征隊隊長になりそこねた、と思った。

 

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん

 

※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年12月5日号)

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