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吉田戦車あの味と食感を忘れられず「カール」買いまくる

連載 投稿日:2017.12.06 20:00FLASH編集部

吉田戦車あの味と食感を忘れられず「カール」買いまくる

 

「明治カール、東日本で販売終了」のニュースが流れた時、それほどショックは受けなかった。少なくとも、スーパーやコンビニに走ることはしなかった。

 

 もう自分で買うことはなく、きらいではないけど、ファンというわけでもない。

 

 何年も食べていない気もするし、いや割と最近どこかで口にした気もするぞ……、それくらいの立ち位置にカールはいた。

 

 だが、販売終了がせまる中、日に日にあの味と食感の記憶はよみがえり、スーパーの、かつて並んでいたあたりの棚を見にいっては、売り切れを確認してションボリするようになっていた。

 

 夏に販売終了というのは、とてもカールらしいと思うのだ。

 

 私は8月生まれなのだが、小学生の頃、友達を呼んで開いた誕生日会や、あるいはお盆にいとこたちが集まる祖父母の家に、たぶんカールはあったな、と思うからだ。

 

 もちろん季節に関係なく、同級生が集まっておやつを食べる場所に、かっぱえびせんやポッキーなどとともにカールはいたと思う。友人のアパートで酒を飲む歳になれば、そこにもかなりの確率でいたような気がする。

 

 三橋美智也のCMソングとともに、少年時代から青年時代を彩ってくれた菓子といっていい。

 

 7月の終わり、近所の小型スーパーに入荷しているのを見かけ、ドキドキしながら4袋買った。

 

 買い占めたりはせず、もちろん何袋かは残したが、4袋はあきらかに「ノスタルジーおやじの駆け込み買い」である。さいわい店の人に「4袋も……」とつぶやかれるようなことはなかった。

 

 2袋は自分ち用に、2袋はお世話になっているお宅へのお中元とした。喜ばれたが、翌日、そこの旦那の実家が大阪だったことを思い出し、かなり本気で後悔した。

 

 その後、海水浴に行った伊豆下田のコンビニでもカールを見つけ、日焼けした若者たちに奪われる前にあわてて2袋買い求めた。

 

 といっても若者たちが、「やべ、カールあるじゃん!」などと目の色を変える気配はまったくなかったのだが。彼らにとってこの手の味でなじみなのは<うまい棒>なんだろうな。

 

 宿で、初めてカールを口にする小2の娘が、1袋の3分の2ぐらい食べた。ふだんあまりスナック菓子慣れしていないせいもあるだろうが、明治製菓(現・明治)の人たちにお見せしたいような食べっぷりだった。

 

 YouTubeでカールおじさんのCMを見せる。

 

 なつかしく思いつつ、この、きわめて昭和なイメージで売ってきた商品が、平成29年に生産縮小するのは、無理もないことのような気もするのだった。

 

 今後、西日本に旅したとき、みやげにカールを買うだろうか。

 

 おみやげにはしないかもしれないが、コンビニで水や酒といっしょに買い、ホテルでさくさく食べる可能性は高い気がするな。

 

 ともあれ、ありがとう、カール。

 今思い浮かぶのは、そのひとことだ。

 

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん

※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年12月12日号)

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