連載
村田諒太×那須川天心
I'm Ready!FLASH編集部
記事投稿日:2018.01.05 00:00 最終更新日:2018.04.11 15:35
―― お互いにトレーニング方法は違うと思うのですが、那須川選手から村田選手に聞いてみたいことはありますか?
那須川 すごく興味があったのは、目のトレーニング(ビジョントレーニングなど)をやっているじゃないですか。あれはいいですか?
村田 僕はすごくいいと思います。あんなもの必要ないって人もいますけど。やって損はないかなって思います。僕はあれをやることによって、非常にパンチも見えやすくなったし。あとは目の使い方によって、緊張状態かリラックスできている状態かを判断できるようになったりとか。
那須川 (村田さんの試合前の)煽りとか、テレビで見ていて、何しているのかなって。ほかの人があんまりやらないので興味を持ちました。
―― 取り入れてみようというのはありますか?
那須川 何のためなのかわからなかったので、いま聞いて、ちょっとやってみたいなって思いました。
―― 動体視力の良さは、選手それぞれ差があると思うのですけれども、村田選手も試合が近づいて疲労が溜まってくると、スコアが上がらなかったじゃないですか。脳と身体の両方が疲れてくると、そういうのにも影響はあるんでしょうか。
村田 そうですね、集中状態がどうかということだと思うんですね。疲れているときは、結局、その集中状態が保てなくて、機械でもすごく顕著に出ますので。そこで集中状態と力みの状態の違いがわかったり、いまの自分の状況を教えてくれたりするので。ひとつの自分の基準を持っていると、コンディションを整えやすいとか、自分の気づかないメンタルのところを教えてくれたりするので、僕はあのトレーニングはすごくお勧めします。
―― それは格闘技の選手向けという意味じゃなくて?
村田 そうじゃないと思いますね。ほぼ、すべてのスポーツ選手向けだと思います。野球選手だったら、あの選手は目がいいとか言うじゃないですか。ボクシング選手で目を鍛えてないって変じゃないですか。
―― 動体視力はどんなスポーツ選手でも鍛えたほうがいいと。
村田 動体視力だけではないですね。速いものをとらえるとかだけじゃなくて、いろんな視野のトレーニング、周辺視だったり、一瞬の判断だったりとか、そういういろんなものを含めての視野トレーニングなので。
―― 那須川選手もやったらいいと思いますか?
村田 彼ぐらいの選手に僕がね、こういうトレーニングやったらいいよとか、ああいうトレーニングやったらいいよとか、上から言うことはまったくないですよ。彼のレベルなら、自分でトレーニングを積み上げていくのだろうし、そうやって興味を持ったことは自分でやっていくだろうし。そういう子じゃないと、まず強くならないよね。ああいうトレーニングがいいよ、こういうトレーニングがいいよって、僕が勧める必要なんてまったくなくて、彼の中にある感性でやっていくだけなので、彼からしたら大きなお世話だし、興味を持てば自分からやるだろうし。それでいいと思うんですね、僕は。
―― 試合でのスタミナについてですが、当然、当日のコンディションであったり、相手の能力、試合展開、自分のチャージの度合い、相手のチャージの度合いなどで変わってくることですが、試合でのスタミナをどのように考えていますか。そして、どのようにトレーニングしていますか。
村田 実際の肉体、酸素切れのスタミナ切れと、精神的なものが作る、脳が作るスタミナ切れっていう状況の2つがありますよね。例えば、高強度のインターバルトレーニングをしたときに起きるような、ラッシュをかけて、無酸素状態で酸素負債に陥って、呼吸器系のスタミナ切れの状態……それに関しては、ある程度トレーニングでカバーしていけると思います。もうひとつは脳が作るところがありますよね。相手にパンチがバチって効いた瞬間、選手は急に元気になっていくっていう。脳がどこかでブレーキをかけているのがほどけるという、そういう瞬間だと思いますし。僕の場合は基本的にスパーリングで作っていくのですが、試合中の脳が作っている部分のスタミナっていうのは、コントロールできないと思います。コントロールできるのは、高強度系のインターバルトレーニングでできる酸素負債の状態から、いかに回復できるかってこと。ワンアクションに対してリカバリーをどれだけ早くできるかということ。そこのトレーニングはやるべきだと思いますけど、興奮しようとか、いま相手が効いたから行けっていうような脳が作るスタミナは、絶対にコントロールできるものじゃない。だから実質的にトレーニングでは、試合の完全な再現は不可能です。ただ、そのシーンを予想して、そのシーンをピックアップしてそのシーンに向けてのトレーニングはできると思います。
―― あるレベルでの試合の経験がプラスになってくる?
村田 もちろん、その経験っていうのはプラスになってきますね。
―― 那須川選手はどうですか? わりと早いKOが多いと思いますが。
那須川 試合で自分が有利な状況、場面を作れば、あんまりスタミナ切れはしない。例えば、もらってやばいと思うと、スタミナが減っていくのも早いと思うので、本当に有利な状況、自分の距離、自分のやりやすい戦いができれば、多分、そこまで切れることはないかと思います。自分のペースだと疲れはしますが、スタミナ切れまではならないし、逆にやられてるペースだと呼吸が一気に止まったりとかするので。自分が思うように試合ができる練習をしておけば、問題ないと思っています
―― お二人とも「自分はビビリだ」とよく話されています。格闘家として、ビビリの性格がプラスに働くことってあるのでしょうか。
村田 格闘家だけじゃなくて、ビビリだったりネガティブだったりする精神って、ひとつは危機を察知して回避しようとするわけです。ポジティブで楽観的な人間だったりすると、そういう危機も感じなくて、なんとなくイケる、イケると思ったままリングに上がっちゃって、その危機を察知できないまま倒れてしまっていたとか往々にしてある。だからネガティブだからこそ、ビビリだからこそ、いろんなことに注意して練習していって、その結果、最終的にポジティブになるっていうね。結果がポジティブに終わるという、そっちの方が僕はいいと思っていて。だから、僕もこのネガティブな性格いやだな、ビビリな性格いやだなって思っていたのですけど、最近はそれでいいのかなって思っていますね。
―― 那須川選手はどうでしょう?
那須川 僕もそうですね、試合が決まったときは、相手を怖いなとか、どうしようって思うんですけど、やっぱりそれって自分がビビリっていうか、大丈夫かなって、相手を想像以上に怖がっちゃうんですよ。なんか自分で、相手を実力以上の選手として想像するというか、5倍ぐらい強い選手としてイメージしていると、僕は練習しなくちゃなとか、注意することが多くなるので。そういう面では、この性格でよかったなって思います。基本、なんでも怖いんで、その怖さに勝つためにトレーニングしなくちゃ、といつも思いますね。
―― ちなみに怖いものはありますか?
那須川 暗いところかとか、おばけとか。すごく苦手なんです。
村田 そっちのビビリ(笑)? 格闘技に対するじゃなくて?
那須川 そっちもです。お化け屋敷とか、絶対に無理です。怖いものは見たくないです。
村田 おれもできたら見たくないな。
那須川 夏とかテレビでやっているじゃないですか。なんであんなのやるんだろうって。
―― 村田選手は?
村田 いや、特に。もう31歳なんでね(笑)、どうってことないですね。
―― 特に暗い場所、高所恐怖症とかはないですか?
村田 高いのは苦手ですね。高い所はダメですね。観覧車に乗ろうなんて誘われた日には、ふざけるなって思いますね。ジェットコースターもダメですしね。とにかく高いところはダメですね。
―― 那須川選手は高いところは?
那須川 僕は高いところは大丈夫ですね。バンジージャンプとか、やったことあります。すぐに飛びました(笑)。
村田 僕は逆バンジーならやったことあるな。
―― 逆バンジー?
村田 韓国で、井上尚弥選手と一緒に行ったときにやったんですけど、もう作りがね、クレーン車みたいのにバーを立てているだけで、リアルに危ないやつだなと。
―― 釣り上げられるのですか?
村田 そう、そのチンケな作りで釣り上げられるんです。日本でやれって言われてもできない。この機械に対する信用性のなさ(笑)。バンジーは無理だな、上から下の。
那須川 僕がやったのはタイでやったんですけど。
村田 怖っ!
那須川 すごく怖かったです。変なゴンドラで上まで上がって、上がるときもずっと揺れているんですよ。いつ壊れるか、わからないぐらいだった(笑)