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吉田戦車ハンド・スピナーを買うも娘にメイン使用権を譲り渡す
連載FLASH編集部
記事投稿日:2018.01.17 11:00 最終更新日:2018.02.21 10:38
2017年を代表する流行りものといえば、これだろう。春頃に新しもの好きの人がツイッターに画像をあげていて、ちょっと気になっていた。
だが、もう小中学生でもなく、「おれ買ってもらったぜ。まだ持ってないの? 遅れてるー!」などという憎らしい同級生はいないわけで、それほど物欲はあおられなかった。
夏の初めに「そろそろ買ってみてもいいか」と、ネット販売サイトのレビューなどを読み始めた。
でも、こういうのを通販で買うってのもなあ、と、購入ボタンは押さなかった。オモチャ屋や駄菓子屋の片隅で出会いたいような、そんなものだよな、と思った。
7月の終わり頃、家電量販店のオモチャコーナーをのぞいてみたら、あった。「ついに出会ってしまったな」と思い、一番安い、410円(税込み)の黄色いやつを購入。
プラスチック製で、重りとなる3か所が金属。安っぽさを隠そうとしない素朴な見た目で、410円は納得のお値段だ。
家に帰って、さっそく指で回してみた。よく回る。指にはさんで回し、そこから親指を離して、指の上で回す。床に置いて床で回す。
できることといったらせいぜいそれくらいで、楽しいような気もするし、どこが楽しいのかわからない気もする。
そもそも「そういうヒマつぶしの手遊び道具である」と、どの紹介記事にも書いてある。
ネコが興味を示し、やたら手や鼻先を出してくる。回転に当たっても痛くはないようで、飽きずに邪魔をしてくる。
こっちが先に飽きた。
2日後、今度は書店のレジ横で遭遇。
「HYPER合金製 ハンド・スピナー」。A5の紙ケースに入っていて、1080円(税込み)。
買うしかあるまい。
さすがは書店販売仕様、「ストレス解消」「脳トレーニング」「禁煙促進」「集中力アップ」「指先運動」などなど、健康本好きの中高年向けと思われる、さまざまな販促文字がおどっている。
さらに「高品質&高回転ベアリング使用」「回転を加速させる重量感ある合金製」とあり、高スペック好きにもアピール。
帰宅して黄色いのと交互に回してみると、やってることは同じなのだが、材質とサイズがちがうので、回転の微妙な差がおもしろいといえばおもしろい。
ネコの他に、今度は小2の娘が興味を示した。
そりゃあ、示す。
貸し与えると、気に入ったようで、いつも一人でやっている「魔女だかプリキュアだかごっこ」の世界にさっそく取り入れ、アイテムとして活用しはじめた。
重ねて回したり、離れたところで回して「そっちが止まったら、世界が危ない!」と叫んだり、その応用っぷりはさすがである。
中年のストレス解消や集中力アップ目的よりは、ハンドスピナーも回され甲斐があるだろうと思い、おとなしくメイン使用権を娘にゆずり渡した。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2018年1月16・23日合併号)