連載
吉田戦車ミックスナッツとプレーンヨーグルトの共通項を思う
連載FLASH編集部
記事投稿日:2018.03.21 06:00 最終更新日:2018.03.21 07:55
スーパーの「ナッツ関係」の棚をじっくりご覧になったことはあるだろうか。
けっこう広い。
私は長年、日常的にスーパーマーケットを徘徊しているが、前はこんなに広くなかったと思う。意識して観察してきたわけではないから漠然とした印象でしかないが、ここ10年ぐらいでずいぶん広くなった。一棚すべてがナッツ関係だったりするくらいだ。
日本人に欠かせない定番商品に、いつの間にかなったんだな。
ミックスナッツ、アーモンド、クルミ、カシューナッツなど、その多くが「食塩無添加、ノンフライ」である。通常袋と並んで、お徳用の大袋まであったりする。
かつてミックスナッツは、酒のつまみコーナーに、あたりめなどとともにぶら下がっているものだった。
そういう場所が今も定位置の、バターピーナッツの仲間。しょっぱくて油っこい、アルコールのお友だち。
今は無塩ノンフライが主流だ。かんしゃく持ちの酒飲みおやじなら「製菓材料かよ!」と吐き出しかねない、ヘルシーな商品として再生を果たした。近くに置かれているのも、さきイカやチーズ鱈じゃなくて、ドライフルーツである。
ご婦人たちがヘルシーな食品として、ヨーグルトなどとともに普通に買いものカゴに入れるカテゴリーに入った。まったく別の人生を歩み始めたようにすら見える。
25年ぐらい前に買った栄養学関係の本に「ドライフルーツ、ナッツ類はすぐれたミネラル源。欧米では<ブレインフード>などとも呼ばれる」というようなことが書いてある。
味つけされていないナッツ類など、まだ自然食品店ぐらいにしか置いていなかったと思う。その頃からその効能は健康雑誌や番組で紹介されるようになり、世間に広まっていった。
健康食品仲間であるプレーンヨーグルトに、立ち位置が似ているのかもしれない。あれもかつては小さい瓶に入った甘いデザートで、プリンやゼリーの仲間みたいなものだったから。
そういうヨーグルトが普通だった日本人の前に、プレーンヨーグルト(400グラムぐらいのパックのやつ)はその姿を現した。
「なにこれ、甘くないじゃないの!」というクレームを予防するためか、砂糖の小袋がついていたな。その砂糖も今ではつかなくなっているようだ。
というわけで私も、ミックスナッツにはお世話になっている。間食としてのもの足りなさにもいつの間にか慣れ、欠かせない存在となった。
酒のつまみとしては、あいかわらずもの足りない。
酒には塩分が合うんだよなー、あ、そうか、だから酒好きは高血圧になりがちなのかー、あはははは、と笑いながら、無塩のナッツをカリカリかじって、前はたまにすすることもあった「シメのインスタントラーメンとか」を我慢している。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2018年3月20日号)