そんな村田に挑むブランダムラとはいかなるボクサーなのか。まずは簡単にその横顔を紹介したい。
育った環境はなかなかタフだったようだ。幼いころに両親が離婚、母親が失踪し、父も育児に関心を示さず、父方の祖父母に育てられたという。
19歳で初めてアマチュアの試合に出場してアマで40戦。ナショナルチーム入りしたものの特筆すべき勲章はなく、一度はボクシングから遠ざかった。プロデビューは27歳。2016年12月に3度目のチャレンジで欧州王座を獲得した。38歳にして世界初挑戦のキップを手にするまで11年を要している。
両親が離婚しているのは村田も同じだが、ボクシングの実績には大きな開きがある。言うまでもなく村田はアマ138戦、世界選手権で銀メダル、五輪で金メダルを獲得した正真正銘の元トップアマ。プロデビューしてからも14戦目で世界王者となっており、そのキャリアはあまりに対照的と言わざるを得ない。
では村田はあっさりとブランダムラを料理してしまうのだろうか。もしそう聞かれたら、「そう簡単ではない」と答えよう。ここがボクシングの面白いところだ。
ブランダムラのプロ戦績は27勝(5KO)2敗。数字が示すように決してパンチのある選手ではない。しかし、KOが少ないということは長丁場に習熟しているということであり、実際に駆け引きや試合運びに長けている。技術と頭脳で勝負するタイプだと言えるだろう。
ブランダムラは1月に日本で開かれた記者会見で「自分はカメレオンのようなボクサー。相手によって戦い方をどうにでも変えられる」と自らを評した。おそらく村田のボクシングを徹底的に分析し、さまざまな揺さぶりをかけて混乱させようとするに違いない。