連載
吉田戦車「1滴だけ落とせる醤油差し」で目指す減塩生活
連載FLASH編集部
記事投稿日:2018.04.11 06:00 最終更新日:2018.04.11 08:07
減塩生活は続いている。
正確に計っているわけじゃないので、今1日にどれくらい塩分をとっているのかよくわからないが、気持ちだけはがんばっている。
たとえば、毎朝食べる納豆は、私の分だけ別皿だ。妻子の分には麺つゆなどかけて出し、自分の分には自家製「酢タマネギ」をのせたりする。
タマネギを薄切りにして酢に漬けたもので、健康雑誌で「血圧改善に、血管にいい!」とすすめられる常連のような常備菜だ。
だが、ではその酢タマネギ納豆は効いてるのか? と問われれば、よくわからない、と答えるしかない。
実感として、何かひとつの食品が劇的に高血圧を改善するということはない、といっていいような気がする。
それでも少しずつ、塩分を減らしたり運動したり野菜を多くとったり、酒をひかえたり(これが一番できないけど……)することが、血圧改善道というものだろう。
減塩用醤油さしにも、もちろん手を出している。
最初に買ったのは「しょうゆちょいかけスプレー」というものだった。醤油のボトルっぽいラベルが巻いてあるPET樹脂製の国産品。醤油好きの心をくすぐるグッドデザインだ。
いい商品だと思ったが、醤油さしとして使うのはやめてしまった。私がヘタなだけかもしれないが、目標の、たとえば刺身に正確にかからず、横に散ってしまったりするのだ。
あと、プッシュとともに気化した醤油のいい香りがたつ。いい香りだなあ、と思いつつ、それって服やメガネや髪に、ごく微量ながら醤油の粒子がつくってことだよな……と思ってしまう。
その感じが苦手で醤油は入れなくなったが、塩水や酒などを入れて、調理用の霧吹きとして活かせないかと考えている。
最近買ったのが「プッシュワンしょう油差し」というもの。
これも日本製。日本のキッチン用品メーカーの、醤油にそそぐ情熱を感じさせてくれる。一滴だけ落とせるタイプで、回転寿司店などで見かけることもありますね。
悪くない。液ダレしないよう、やや使い方にコツがいるが、目玉焼きなどにぽとっと落すのにいい感じだ。卵かけごはんの生卵にも一滴ずつ落として、ギリギリごはんが食べられる醤油量を探ることが可能である。
小学生の娘にもいいと思った。わが家ではずっと「ポーレックス」のセラミック醤油さしを愛用してきており、液ダレしなくてとてもいい製品だけれど、子供には量の調整がまだむずかしい。ドバッとかけがちだ。
この一滴ずつたらすタイプは、子供時代から薄味を意識するためにいいんじゃないかと思う。これを使っていると、一滴一滴がいとしくなってくる。
醤油がない人生などあり得ないからこそ、「塩や味噌より、お前が好きさ」などと語りかけながら、たいせつに味わいたい。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2018年4月17日号)