十分なパフォーマンスをしているように見えたが、本人はしっくりこない感覚を味わっていたという。
「右ストレートを打つときに体が開きすぎ、右が出るのが遅かった。パンチの乗りも悪かった」
すかさず村田は修正する。5回からピッチはさらに上がった。右ストレートがブランダムラのガードを突き破るようになり、ボディへもパンチをつなげ、挑戦者を着実に追い込んでいった。
クライマックスは8回。フィニッシュブローは右フックだった。ナックルを返さず少しロングレンジでガードの外側から弧を描くようにパンチを突き刺すと、ブランダムラがキャンバスに崩れ落ちた。何があるかわからないといわれる初防衛戦のプレッシャーを跳ねのけ、元ヨーロッパ王者の肩書きを持つブランダムラに8回2分56秒TKO勝ちで防衛を成功させた。
試合後はリング上から「ゴロフキンを目指してやりたい」とファンにアピールし、今後のビッグマッチ実現に期待を持たせた。
「右はストレートやクロスで打つことが多いんですけど、相手はそういう僕の攻めにしっかり対策してきた。だからパンチの軌道を変えようと考えて出したパンチです。あとから映像を見直して『こんな角度で打ったんだ』っていう驚きはありました」
適切な作戦を立て、それを実行に移し、うまくいかないことがあれば状況に合わせて修正を加える。試合後の村田の表情は明るかった。
「ほっとしました。エンダム1戦目、2戦目を見てもらった上で、(今回つまらない試合をしたら)なんだ村田ってたいしたことないじゃん。(倒さなかったら)判定ばっかりって言われるじゃないですか。だから、ノックアウトという形で期待にも応えられたと思いますし、がっかりさせなかったというのはよかったかなと思いますね」