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吉田戦車「塩分補給」のあまり大量の汁麺を食す
連載FLASH編集部
記事投稿日:2018.09.19 11:00 最終更新日:2018.09.19 11:00
もう「暑い」と言いたくないほどの暑さが連日続いた夏。夏生まれなので、本来夏はきらいではないのだ。
家の中でエアコンかけてじっとしている、というのもさびしく、炎天下に、セミが鳴く川沿いの遊歩道を自転車で走りにいく。
水分は、再利用の500ccペットボトルに入れた水道水だ。それで十分なのだが、汗でビショビショになりながら「そういえば、熱中症対策には、水分だけじゃなくて、塩分補給も大切なんだっけ?」と思い出した。
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経口補水液やスポーツドリンクを飲んだ方がいいのか、塩飴や塩タブレットをなめるべきなのか。その手のものを買うのはなんだか悔しいな……、というようなことを考えつつペダルを踏んでいるうちに、暑さのせいか思考が飛躍した。
夏の昼食は、やっぱり麺類が多くなる。冷やし中華や冷やしきつねそばなどを食べていたが、夏こそ熱々の汁麺を、思う存分食べていい季節ではないのか。
普段がまんして残しているしょっぱい汁を、ゴクゴク飲んでもいいのではないか。水分とともに塩分を摂取する必要もあるのだから!
ものすごくいいことを思いついた気持ちになり、積極的に汁麺を食べるようになった。
8月の20日間ほどで、ラーメン6杯、立ち食いそば2杯。普通のそば屋で天ぷらそば。さぬきうどん屋でちくわ天うどん……。それまでの飢えを満たすかのように、汁麺をすすりまくった。
「こういっちゃ悪いが、冷やし中華なんて食いたくて食ってるわけじゃないんだよ!」などと罰当たりなことを思いながら、近所の「町中華」の、550円とか600円ぐらいのラーメンを堪能した。
至福! セミよもっと鳴け。おれは今日もラーメンを食べにいくんだ! ……などといい気になっていたら、久しぶりに測った血圧が140/110などということになっていて、冷水を浴びせられたような気持ちになった。
健康診断では130/100前後で、すでに「要経過観察」な高さなのである。
あわてて、ネットで勉強し直すと、経口補水液の塩分量の目安は、水1リットルにつき、塩3グラムぐらい。子供が病気の時に、砂糖、レモン汁など加えて作ったことがあったが「しょっぱくてうめー!」というほどの塩分量ではない。
ラーメン一杯の塩分量は6〜10グラム。温かいそば、うどんが4〜6グラムぐらい。
今までどおり、汁を一口二口おそるおそる飲んで、あとはがまんするくらいでも、経口補水液1リットル分の塩分をじゅうぶんにとっている、ということだ。
ゴクゴク飲んでOK! ではぜんぜんなかった。
そもそも、塩分が不足して熱中症になる人は、夏バテでろくに食事ができていないのかもしれない。普通に食事ができている私は、いつもどおり減塩を心がけなさい、ということだった。
しあわせな汁飲みの夏は、このようにして終わりを告げた。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。
「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。最新刊『忍風! 肉とめし 1』『来れば? ねこ占い屋』(ともに小学館)が発売中!
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2018年9月25日号)