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【数字は踊る】本はどこへ行く

連載 投稿日:2016.04.02 15:00FLASH編集部

【数字は踊る】本はどこへ行く

写真:AFLO

 

 

●2020年に本の世界が変わる?

 

 電車の中で本を読んでいる人を見かけなくなった。かつては、 いい大人がマンガ本を読んでいると批判されたものだが、それすら懐かしい感じだ。

 

 本の代わりに、猫も杓子もスマホの画面を見ている。本が売れなくなったわけである。

 

 実際本の売り上げは年々下降している。しかしそのなかで、電子書籍の市場は拡大していて、米国の大手出版社では売り上げに占める割合が20%を超えたそうだ。

 

 2017年には電子書籍の売り上げが紙の本を抜く、との予測を昨年6月に発表した米国のコンサルタント会社もある。

 

 日本では電子書籍の売り上げはまだ10%に満たないが、3年遅れで米国を追っているという。ならば、2020年には日本でも電子書籍の売り上げが紙の本を抜くことになる。

 

 記念すべき東京オリンピック開催の年は、本の世界が大きく変わる年になるかもしれない。

 

 昨年1年間の書籍に対する平均の支出額はどのくらいだったか。 総務省の統計によると、1世帯(2人以上)あたり8658円だった。 単身世帯では9396円。

 

 ただし男性と女性では大きな差があり、男性が1万3262円だったのに対し女性は5983円だった。半分以下である。

 

 今年の1月から3月までの1カ月の平均では1世帯(2人以上)あたり716円、単身世帯では723円だった。1 年にするとそれぞれ8592円、8676円となる。

 

 3月の駆け込み需要があっての平均額だから、消費税率アップの影響を考えると、今年もやはり昨年比マイナスということになりそうだ。

 

 2人以上の世帯で書籍費が1万円を割ったのは2006年のことであり、今年は8500円を下回る可能性すらある。

 

●本は楽しい

 

 仮に1年間の書籍費が8500円だとすると、新刊本なら6~7冊、 文庫本なら10 ~13冊ぐらいか。1カ月に1冊読むか読まないかで ある。

 

 これでは全国の書店の数も減るだろう。事実、1999年の2万2296店から今年は1万3943 店(5月1日時点)と、8353 店も減少したそうだ(アルメディアによる調査)。

 

 しかもこの店数は営業所や外商のみの書店も含まれていて、いわゆる本屋は1万800店前後といわれる。しかし、大きな書店に行けば、相変わらず売場は新刊本であふれかえっている。

 

『出版年鑑』によれば毎年おおよそ8万点もの新刊が発売される。これらの本は、いったいどこへいくのか?

 

 本に囲まれた書斎での知的生活に憧れる人は多い。なかには本棚に詰まった本を見ているだけで楽しいという人もいる。しかし蔵書が多くなると困ることもある。管理と本の重さだ。

 

 上智大学名誉教授で評論家の渡部昇一氏の蔵書は15万冊といわれるが、70歳を過ぎて銀行から大金を借り書庫を作ったそうである。

 

 評論家の立花隆氏の蔵書は20万冊を超えるという。本の厚さを仮に平均3cmとして積み上げると6000mの高さになる。これでは管理するのも大変だ。

 

 ところで、日本一の蔵書を誇るのは国立国会図書館である。 日本で出版された本はすべて収集・保存することになっている から、その数も半端ではない。国立国会図書館によれば、2013 年3月末時点で1009万6114冊ということである。

 

 ドイツのヴァルター・デ・グルイター社の『世界図書館ガイド2013』が紹介する、世界の国立図書館の蔵書数ランキングトップ100の蔵書を合計すると、約4億900万冊になる。

 

 本の厚さを平均3cmとして横に並べると1万2270kmになる。東京―ニューヨーク間を優に超す距離だ。

 

 本は楽しい。電子書籍と違って形や厚みがある。それがなければ厚さを合計するような遊びはできないし、だいいち古書をあさる楽しみも、本棚を埋める楽しみも、積読の楽しみもなく なってしまう。

(週刊FLASH 2014年7月1日号)

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