連載
【数字は踊る】超高層ビルの未来
連載FLASH編集部
記事投稿日:2016.04.07 18:33 最終更新日:2016.04.07 20:08
●空をこする摩天楼
超高層ビルが話題になっている。2014年の3 月には大阪の阿倍野に「あべのハルカス」が全面開業し、6月には東京の虎ノ門に「虎ノ門ヒルズ」がオープンした。
「あべのハルカス」は高さ300m(60階)で、横浜ランドマークタワーの296mを抜いて日本一の超高層ビルとなった。日本国内の構造物としては東京スカイツリー(634m)、東京タワー(332.6m)に次ぐ3番めの高さを誇る。
一方の「虎ノ門ヒルズ」は東京都の資料によれば高さ247m(52 階)で、都内では東京ミッドタウン(248m)に次ぐ高さといわれる。
しかし、ビルの最高地点は255.5mで東京一高いビルのようだ。どっちが1位でも2 位でもかまわないが、地震が多い日本で、こんな高いビルを造る必要があるのかという素朴な疑問が湧く。
ただ世界から見ると、日本は超高層ビルの後進国のようである。200mを超える超高層ビルは世界に約840棟あるが、日本は34 棟と全体の4%にすぎない。
日本一の高さを誇る「あべのハルカス」は、高さのランクでいえば世界の75 位だ(CTBUH:高層ビル都市居住協議会調べ)。世界第3 位の経済大国にしては少ない。
現在世界でいちばん高いビルは、2010 年に完成したドバイの「ブルジュ・ハリファ」の828m(160 階以上)だが、世界一を誇れるのはあと数年のことらしい。
1000mを超えるビルが2016 年にはクウェートに完成するほか、2019 年には、サウジアラビアに「キングダム・タワー」というのが登場するという。
じつはこのビル、当初は「マイル・ハイタワー」と呼ばれ1600mの高さになる予定だった。それが地質調査の結果1000 m になった。ということは、1600 m のビルを建てる技術が現実にあるということになる。本当だろうか?
●超高層ビルがシャッター通り化
日本では、横浜ランドマークタワーを4m ほど抜くのに20年近くかかった。しかし、これは技術の問題ではなく、航空法による高さ制限に大きな理由がある。
ランドマークタワーも航空法により296m に制限された。福岡市は航空法による高さ制限のため、空港に近い都心部が50~60m(11~14 階)の低層で、周辺が高層になっている。
高層建築物の高さを制限するものは航空法だけでなく、都市景観保全を目的とした高さ規制もあるし、土地に対してどの程度の建物を建てられるかを示す容積率もある。
しかし、経済発展を目的に東京などの大都市の容積率は緩和される方向にある。老朽マンションの建て直しにも容積率が緩和される見通しだ。つまりより高いビルが造られるということだ。
マンションも都心の超高層が人気を集めている。現在最も高いのは大阪の北浜タワーで209.4m(54階)、次いで川崎の武蔵小杉・ミッドスカイタワーが203.5m(59階)。
今後も200mを超すマンションが計画されている。2020 年に開催される東京オリンピックがそれに拍車をかける。
臨海部の競技場が集まる周辺では高層マンションの建設計画が相次ぎ、すでに土地バブルが始まっている。
バブルの再来はまだしも、地震や液状化対策は万全なのか。幸いなことに超高層ビルはまだ巨大地震に遭遇したことがない。それゆえ、安全はシミュレーションによって確認されているだけである。
東京への一極集中化はどうか。都内ですら、職住接近を求めて周辺部から都心部へ人が移動している。人口減も問題だ。2048年には9913 万人、2060年には8674 万人になるという。
しかも4割が65 歳以上だ(国立社会保障・人口問題研究所発表)。超高層マンションやオフィスビルが建ち並んでも街に人がいないということにならないか。
天を目指したバベルの塔は、人間の傲慢さのあらわれとして神の怒りを買った。超高層ビルの圧倒的な高さに、その話を思い出す人もいるに違いない。
(週刊FLASH 2014年7月15日号)