連載
【数字は踊る】歯は命!
連載FLASH編集部
記事投稿日:2016.04.14 20:39 最終更新日:2016.04.14 20:43
●お歯黒から白い歯へ
美人の形容に使う「明眸皓歯(めいぼうこうし)」という四字熟語がある。明眸とは澄んだ瞳のことで、皓歯とは白い歯のことだ。
明眸はともかく、最近は歯のケアや歯科矯正が進み、歯のきれいな人が増えた。
白さもさることながら歯並びが美しい。それを感じるのは街頭インタビューに答える若い女性や、子供たちの笑い顔を見るときである。スポーツ選手もおしなべて歯がきれいだ。
しかし、それがテレビに出てくるタレントとなると話が少し違う。とりわけ女性タレントのなかには、ハリウッドスマイルのつもりか、これ見よがしに歯をむき出すやからもいる。
歯の品評会ではないのだからと突っ込みたくなる。
1995年から放送された「芸能人は歯が命!」という歯磨き粉 の宣伝が、一世を風靡した。それに続いた野球の新庄剛志選手の真っ白な歯も衝撃的だった。
今では、白い歯と歯並びのよさが美しさの必須アイテムになっているが、100数十年前を振り返ればまだお歯黒の風習が残っていた。
この習慣がなくなったのは大正末期のことである。そもそもお歯黒は古墳時代にはすでにあり(日本審美歯科協会「お歯黒の歴史」)、平安時代には上級貴族の女子の成人の儀式として定着していたという。
長い民族の歴史から見れば、白い歯の歴史は浅い。オセロゲームのように、黒から白、白から黒とまた変わることだってあるかもしれない。
ところで人間の歯は何本あるのだろうか? 32本と歯医者から教えられた記憶があるが、プロレスラーの大巨人、アンドレ・ザ・ジャイアント(1946~1993)は42本の歯があったという。
真偽は定かではないが、写真を見ると大巨人にしては小さな歯をしている。本当に42本ぐらいはありそうだ。
●80歳で何本の歯を残すか
人間の歯の数は、一般的に4本の親知らずを含めて32本である。西洋人は小顔だが顎の奥行きがあり、親知らずが生えそろう。
ところが顎の小さい日本人は親知らずが生えそろわない。そこで、日本人の歯の数は28本とされたりするが、正確には28~32本で、平均数は西洋人に比べると確実に少ない。
古人骨の研究で有名な人類学者の鈴木尚(1912~2004)に よれば、日本人の親知らずが生えそろう割合は、縄文時代の81.0%から鎌倉時代には42.9%、現代では36.0%と減少して いる。
実際、親知らずが水平に埋伏しているか、傾いて萌出している頻度をみると、男女とも1930 年代生まれは20% 弱であるが、1980年代生まれではほぼ70% におよぶ(「歯の豆辞典」 YAMADA DENTAL CLINIC)。
グルメ番組などでは柔らかいことが美味しいことのように評価される時代だから、顎は細くなり親知らずはますます生える場所を失っていくことだろう。
厚生労働省は1989年から「8020(ハチマルニイマル)運動」 を進めてきた。80 歳で自分の歯を20本以上保とうという運動である。20本が不自由なくなんでも食べられる数だそうだ。
同省が6年ごとにおこなう「歯科疾患実態調査」では、80歳の人の残存歯平均と20本以上の残存歯を持つ割合が公表されている。2011年で14本である。
歯の先進国であるスウェーデンは8020をすでに達成し、米国 は18本といわれる。それに比べると日本は…。しかし、もともとの歯の数を考えれば、日本だってけっこう頑張っている。
(週刊FLASH 2014年7月29日、8月5日号)