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村田諒太、雪辱戦へ。

I'm Ready! 投稿日:2019.06.04 10:20FLASH編集部

 前世界王者の村田諒太(帝拳)が現王者のロブ・ブラント(米)に挑むWBA世界ミドル級タイトルマッチ(7.12エディオンアリーナ大阪第1競技場)まであと1カ月あまりとなった。まさかの敗戦から9カ月、村田はどのような思いで再び立ち上がり、難しいと言われる雪辱戦に臨もうとしているのだろうか。

 

村田諒太、雪辱戦へ。

 

 昨年10月、ラスベガスで行われたブラントとの一戦は、本人の言葉を借りれば“屈辱”の敗戦だった。圧倒的な勝利を期待されながら、伏兵と思われたブラントの手数と機動力に翻弄され、終わってみれば大差の判定負け(スコアは109-119×2、110-118)。
勝てばミドル級の“帝王”ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との大一番も見えていただけに、村田の受けたダメージは大きかった。本人は当時の心境を「もうこれ以上ボクシングをすることはないと思った」と語っている。
村田は日本人2人目のボクシング五輪金メダリストとしてプロ入りし、大手広告会社、テレビ局の全面バックアップを受けてキャリアを進めてきた。その重圧は周囲には想像できないほどすさまじかったことだろう。世界チャンピオンになるという最低限の“ノルマ”は達成した。もう肩の荷を下ろしたい。引退をほのめかすセリフには、そんな背景もあったのではないだろうか。

 

 

 

 それでもなお、村田はもう一度リングに戻り、ブラントに立ち向かおうと心に決めた。4月25日に開かれた記者会見で、村田は次のように決意を述べている。
「将来、自分の人生を振り返って、あの試合が最後でいいのかと問いかけたとき、それはないなと思った。試合内容自体も恥ずかしいものではありましたが、それをしっかり見返すことで自分自身、心身ともに成長できていると思う」
 決意表明では自らを追い込むような発言も少なからず口にした。
「これで負けるようだったら、プロとして価値はないと思っている。こんなリマッチさせてもらうチャンスをもらって、それを活かせないなら、それはそれまでの人間」
「チャンピオンになってちやほやされるようになって、日常を過ごすときに永遠を感じてしまっていた。これが最後になるかもしれないと感じたときに1日1日を大切にするし、いい意味で緊張感を感じている」
 オリンピックの頂点、そしてプロの世界チャンピオンという日本人ボクサーがだれも見たことのない光景を目にしてきた村田が、大げさではなく、ボクシング人生のすべてをかけてブラントに挑むのだ。

 

 

 

 

 村田は「恥ずかしかった」という前回の試合内容を詳細に検証し、新たに生まれ変わるべくトレーニングを進めている。「前回と同じことをしたら負ける。同じようなファイトをするつもりは全くない。勝ちたいし、倒したい」。4月、そして5月の練習を見てみると、村田の決意のほどがトレーニングをしている姿からひしひしと伝わってきた。
 その一つがカルロス・リレナス・トレーナーとのミット打ちだ。チーフの田中繊大トレーナーのときは、いかに拳に体重を乗せてパンチを打つか、つまりは相手にしっかりダメージを与える一発を打つことを意識しながらミットを打っていた。
 それはある意味、自然の成り行きだったと言えるだろう。村田のボクシングは主武器である右ストレートをいかに打ち込むかが勝負だ。加えてブラントと戦力を比較したとき、村田がパワーで上回っていることは明らかだったからである。
 前回の試合の反省を踏まえ、カルロス・トレーナーのミット打ちは、下半身の動きを意識した長めのコンビネーションを要求し、心肺機能的にもかなりきついものとなっている。日本タイトルに挑戦経験を持つ元ミドル級選手のカルロス・トレーナーは身体の大きさに加え、3階級制覇の兄、ホルヘ・リナレスを彷彿とさせる俊敏な動きができる。よく動き、速いテンポでパンチを繰り出すブラントを捕まえるために、カルロス・トレーナーが全力で動いて村田を追い込んでいるのだ。

 

 

トップランクがアメリカから送りこんだ新たなパートナーを相手にしたスパーリングもすこぶる好調とのこと。村田は練習後、集まった報道陣に次にように語った。
「(現状は)いままでの試合前の中では心身ともに一番良いと思います。もちろん試合で出なければ意味がないですけど、現時点でも良いに越したことはない。そこはプラスにとらえています。ぶっ倒しますよ」。
 初戦で大差判定負けした相手に雪辱するのは簡単なミッションではない。聡明な村田はそのことを重々承知の上で再起し、今のところ練習では大いに手ごたえを感じているということだ。勝負の大一番まであと1カ月あまり。誰のためでもない、己のプライドをかけた大勝負への準備はいま、佳境を迎えようとしている。

 

 

写真/山口裕朗

 

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